The Passing

岡本源太(美学)。書物を通過する軌跡。http://passing.nobody.jp/

江村公

江村公『ロシア・アヴァンギャルドの世紀』(2011) 20世紀初頭のロシアは芸術にかぎらず多方面で異才を輩出しているけれど、絶対主義(シュプレマティスム)と構成主義の先鋭さにあらためて驚嘆。絶対主義が色彩派で構成主義が線描派という分類もいろいろと…

マラン

Louis Marin, De la représentation. (1994) 美術史と精神分析をめぐるルイ・マランのインタビューを読んでみると、ピエール・フェディダとけっこう交流があったよう。マランの「表象」や「形象」の理論の(隠れた?)影響力は侮れないが、その畢竟とも言う…

ダグロン

Tristan Dagron, Toland et Leibniz. (2009) 思弁的実在論の「ブルーノ問題」でいちばん問題になっていたブルーノの「実体」概念についてもういちど取り組んでみようとなると、まずはやはりトリスタン・ダグロンによる研究を咀嚼する必要あり。論文「『原因…

ブラシエ、グラント、ハーマン、メイヤスー

Ray Brassier, Iain Hamilton Grant, Graham Harman, and Quentin Meillassoux. "Speculative Realism." (2007) 思弁的実在論のそもそもの賭金はなにか、ということで2007年のワークショップの記録を繙くと、レイ・ブラシエの発表が4人の論点を要領よくまと…

ハーマン、グラント

Graham Harman, "On the Undermining of Objects: Grant, Bruno, and the Radical Philosophy" (2011) Iain Hamilton Grant, "Mining Conditions: A Response to Harman" (2011) なおも思弁的実在論における「ブルーノ問題」。論文集『思弁的転回――大陸哲学…

ハーマン、グラント

Graham Harman, "On the Undermining of Objects: Grant, Bruno, and the Radical Philosophy" (2011) Iain Hamilton Grant, "Mining Conditions: A Response to Harman" (2011) すこし時間をかけてあとづけている思弁的実在論における「ブルーノ問題」。ま…

 思弁的転回へ

Ray Brassier, Iain Hamilton Grant, Graham Harman, and Quentin Meillassoux. "Speculative Realism," in Collapse, vol. 3, 2007. Levi Bryant, Nick Srnicek and Graham Harman, eds. The Speculative Turn: Continental Materialism and Realism. Melbo…

ハーマン、グラント

Graham Harman, "On the Undermining of Objects: Grant, Bruno, and the Radical Philosophy" (2011) Iain Hamilton Grant, "Mining Conditions: A Response to Harman" (2011) 先ごろ刊行された論文集『思弁的転回――大陸哲学の唯物論と実在論』(The Specu…

トクヴィル(富永茂樹)

富永茂樹『トクヴィル』(2010) 名前しか知らなかったトクヴィル。「諸条件の平等」のパラドクスをめぐる思索のあとをたどってみると、ミシェル・フーコーやマルセル・ゴーシェなどの現代フランス政治哲学の背後にある厚みを痛感させられる。鎖の解体や部分…

シェリング(松山壽一)、ジャンケレヴィッチ(三河隆之)

松山壽一『人間と悪』(2004) 三河隆之「ジャンケレヴィッチの人称論」(2009) ジョルダーノ・ブルーノの〈相反の一致〉は(クザーヌスといくぶん違って)倫理学化されているのが特徴的だけれど、それを忠実に継承したジェイムズ・ジョイスの考えを別にす…

アンサルディ

Saverio Ansaldi, Giordano Bruno. Une philosphie de la métamorphose. (2010) やたらと「métamorphose」ばかり繰り返す冗長さは措くとして、ブルーノの政治思想の再構成に際して、「権利なき法」などの刺激的な論点をうまく取り出しているように思う。少々…

ヴァールブルク

アビ・ヴァールブルク『蛇儀礼』(原著1923) あらためて読みなおしてみると、学術論文(発表)のお手本のような構成。書かれたときの状況が状況だけに、たしかに推敲されていないにせよ、ヴァールブルクの基本的な発想がよく見てとれる。とくに、「立ち、歩…

カヴェル

Stanley Cavell, The World Viewd. (1971/79) スタンリー・カヴェルの『観られた世界』、おもに映画と他ジャンルとの比較を頼りにして分析が進んでいくが、その分析の進展にあわせて分析の道具立てそれ自体も練り上げていくあたり、ふとロラン・バルトの手つ…

グリーンブラット

スティーヴン・グリーンブラット『驚異と占有』(原著1988) 『マンデヴィルの旅』で語られている多様な風習や宗教への寛容さは、実は遠い他者に関するものであるかぎりで「寛容」というよりも「理論的好奇心」(ブルーメンベルク)であって、その証拠に近い…

クブラー

George Kubler, The Shape of Time. (1962) ジョージ・クブラーが展開するプライム・オブジェクトとレプリカの話、数学とか遺伝学とか文学理論とか比較文法とかのメタファーがあれこれ引っ張りだされるものの、率直なところやや中途半端な印象で、最終的には…

カルキア

Gianni Carchia, L'amore del pensiero. (2000) ジャンニ・カルキアが生前最後にまとめたこの書物(出版自体は死後)。初期著作の集成『イメージと真理』を繙いたあとでめくってみると、議論の幅が格段に広がっていて論述ものびやかな印象。第二部第四章「精…

トドロフ、グリーンブラット

ツヴェタン・トドロフ『他者の記号学』(原著1982) スティーヴン・グリーンブラット『驚異と占有』(原著1988) グリーンブラットの文体はやはりトドロフに比して読むのに忍耐がいる。ともあれ、どちらの書物でも「翻訳」の問題がおおきく焦点化されていて…

トドロフ

ツヴェタン・トドロフ『他者の記号学』(原著1982) 「他者」の問題を考えるためにヨーロッパによるアメリカの「発見」を取りあげるというトドロフの手つきは、方法論的にはアガンベンの言う「パラダイム」に近しい印象があって、さらにはトドロフのストーリ…

ダグロン

Tristan Dagron, "Giordano Bruno et la théorie des liens" (1994) トリスタン・ダグロンの論考では最初期のものだが、一性と無限にもとづくジョルダーノ・ブルーノの道徳哲学(あるいは政治哲学)がけっしてアナーキズムにも全体主義にも帰着しないことを…

カルキア

Gianni Carchia, Immagine e verità. (2003) ジャンニ・カルキアの初期著作四作を集成した『イメージと真理』をぱらぱらめくってみると、ヴィンケルマンからゲーレンまで、近現代ドイツ美学こそがカルキアの出発点だったよう。カルキアの専門と見なされてい…

モンザン

Marie-José Mondzain, Image, icône, économie. (1996) マリ=ジョゼ・モンザン『イメージ、イコン、エコノミー』、久々に手に取ってみると、貨幣とイメージの話は意外とあっさりとしか書いていない。かわりに、「エコノミー」の概念史にわりと多く頁を割い…

カルヴィーノ

イタロ・カルヴィーノ『文学講義』(原著1988) 第四講「視覚性」で展開されている想像力論、ダンテ『神曲』(La divina commedia)からはじまってバルザック『人間喜劇』(La comédie humaine)におわるという構成の妙もさることながら、概念的思考に対する…

五十嵐一

五十嵐一『イスラーム・ルネサンス』(1986) 第六章「“秤”の学――イスラーム的知の相貌」の話、よくある「世界の調和」の話と言ってしまえばそれまでかもしれないが、エウクレイデス(ユークリッド)がイスラームに導入されたときにその幾何学より比例論が重…

五十嵐一

五十嵐一『イスラーム・ルネサンス』(1986) イスラーム美学を論じた「コーランにおける創造観――自己作品化の美学」の章が気になって繙いてみたこの書物、それより次の章「変心の神秘――イスラーム的構造変動論」を面白く読む。「変身」が、変化していると見…

グリーンブラット

スティーヴン・グリーンブラット『ルネサンスの自己成型』(原著1980) ブルクハルト的な「ルネサンスにおける人間の発見」のテーゼを発展的に継承するとこうなるのかといった感のグリーンブラットの「ルネサンスの自己成型」のテーゼ。「ルネサンスになると…

アンサルディ

Saverio Ansaldi, Giordano Bruno. Une philosphie de la métamorphose. (2010) サヴェリオ・アンサルディ、2006年の『自然と力能――ブルーノとスピノザ』は、ブルーノ論としてはちょっと入門書的というか概説的で物足りなかったものの、今年刊行のこちら『ジ…

クブラー

George Kubler, The Shape of Time. (1962) あらためて読み直してみるとジョージ・クブラー、「様式論か図像学か」で二極化していた五〇〜六〇年代のアメリカの美術史業界情勢をまえにしてこの本を書いたのだろうなという印象が強かったり。これが七〇年代に…

ガレン、パンシャール

Eugenio Garin, Medioevo e Rinascimento. (1954) Bruno Pinchard, La Raison dédoublée.(1992) どのインタビューだったか、たしかミシェル・フーコーは「ヒューマニズムはルネサンスではなくて一九世紀の発明だ」という主旨のことを強調していたことがあ…

ドゥルーズ、トゥルニエ

ジル・ドゥルーズ『意味の論理学』(原著1969) ミシェル・トゥルニエ『イデーの鏡』(原著1994) かの「プラトン主義の転倒」が現代芸術に適用されるくだり、収束しえない物語の複数性をジェイムズ・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク』に見いだしながら、…

スピノザ、ワイエルス、エスポジト

Baruch (Benedictus) de Spinoza, Etica. (1677) Olga Weijers, "Contribution à l'histoire des termes 'natura naturans' et 'natura naturata' jusqu'à Spinoza. (1978) Roberto Esposito, Pensiero vivente. Origine e attualità della filosofia italia…