The Passing +

岡本源太(美学)。書物を通過する軌跡。http://passing.nobody.jp/

美学

マッシモ・カッチャーリ『三つのイコン』

Massimo Cacciari, Tre icone, Milano : Adelphi, 2007. マッシモ・カッチャーリはピエロ・デッラ・フランチェスカ《復活》を、アルベルティやヴァッラに体現されているような「悲劇的」人文主義の文脈で見る。カッチャーリによれば、人文主義は単純で純粋な…

ユベール・ダミッシュ『線についての論考』

Hubert Damisch, Traité du trait, Paris : Editions de la Reunion des Musées Nationaux, 1995. ルーチョ・フォンタナ《空間概念——期待》のシリーズは、一つのカンヴァスの物理的破損であると同時に、絵画というジャンル一般の概念的崩壊でもある。カンヴ…

ユベール・ダミッシュ『カドミウム・イエローの窓』

Hubert Damisch, Fenêtre jaune cadmium, Paris : Le Seuil, 1984. ダミッシュの哲学的な核心は、理論と歴史を駆動するアンフォルムとアナクロニズムへの洞察にあるように思うが、彼の仕事を美学美術史の伝統的な主題のなかに位置づけるなら、線と色、および…

マッシモ・カッチャーリ『死後に生きる者たち』

マッシモ・カッチャーリ『死後に生きる者たち』上村忠男訳、みすず書房、2013年(原著1980年、2005年) ニーチェを継いで語られる「死後に生きる者たち」の位置は、同時代性も、反時代性さえもなく、主体を幽霊のごとき絶対的な距離のうちに置く。「自分のい…

星野太『崇高の修辞学』

星野太『崇高の修辞学』、月曜社、2017年 感性に関わる「美学的崇高」の背後に、言葉に関わる「修辞学的崇高」が発掘される。これはアイステーシスの根底にすでにロゴスがあるということなのだろうか。 * 偽ロンギノスは、過去の崇高な作品に触れることがみ…

ジョルジュ・ディディ=ユベルマン『アトラス、あるいは不安な悦ばしき知』

ジョルジュ・ディディ=ユベルマン『アトラス、あるいは不安な悦ばしき知』伊藤博明訳、ありな書房、2015年(原著2011年) アルベルティの物語からグリーンバーグの平面まで、部分を全体に統合していく美学的=認識論的モデルに対して、ディディ=ユベルマン…

ルイ・マラン『王の肖像』

ルイ・マラン『王の肖像』渡辺香根夫訳、法政大学出版局、2002年 (原著1981年) マランによれば、権力は表象としてしか存在しないという。というのも権力が成立するためには実際の物理的な暴力が潜在化され、さらに制度化されねばならず、表象こそがこの暴…

ルイ・マラン『ユートピア的なもの』

ルイ・マラン『ユートピア的なもの』梶野吉郎訳、法政大学出版局、1995年(原著1973年) ユートピアの中立性が、ただ現実社会からの分離独立というだけのことであれば、それは共通のイデオロギーに取り込まれている。そうではないユートピアの中立性は、あれ…

ルイ・マラン『絵画の記号学』

ルイ・マラン『絵画の記号学』篠田浩一郎、山崎庸一郎訳、岩波書店、1986年(原著1971年) 所収の論考「絵画記号学原理」で、マランはタブローの空間を「ユートピア」だと形容している。タブローは、枠内に観者の視点と視線を組織化する行動の実存的空間、生…

ユベール・ダミッシュ『雲の理論』

ユベール・ダミッシュ『雲の理論』松岡新一郎訳、法政大学出版局、2008年(原著1972年) 雲、描かれた雲は、空間でもあれば形象でもあり、象徴にもなれば物質を見せもする。これはたんに多様に使用されるというだけの話ではないし、多彩な機能をもつというだ…

美学入門——読書案内

① 佐々木健一+爆笑問題『人類の希望は美美美——美学』、講談社、2008年漫才師の爆笑問題が日本の学者たちと対話したテレビシリーズから、美学の回。テンポよく気楽に読みすすめられますが、理論的に踏み込んだ議論もあり、「感性的認識の学」たる美学がなに…

美学の今世紀——読書案内

「感性的認識の学」、すなわち知性に対する感性のはたらきを扱う学問として創始された美学は、概念へと規定される以前の思考を問題にするがゆえに、長らく芸術をこそ特権的な考察対象にしてモデルとしてきた。概念以前の思考となれば、言葉によって明晰判明…

大学ではじめて美学に触れるひとへ

美学について 「美学」という学問を知ったのは、大学の1年次生だったときのこと。先史の装飾から現代の映像まで、絵画に音楽に文学に建築に、さらには人間社会も生物行動も自然景観も、「感性」を切り口に横断的に考察していく美学は、世界の姿をまるごと眼…

アロア

Eammanuel Alloa, « Changer des sens. Quelques effets du “tournant iconique” » (2010) イメージ論についての泰斗から新進の論客までを集めた論文集の編集を、このところ矢継ぎ早にいくつも手懸けているエマニュエル・アロア。その見通しの良さが、本人の…

プレヴォー

Bertrand Prévost, « Direction-dimention » (2013) Id., « Des putti et de leurs guirlandes » (à paraître) Id., « Cosmique cosmétique » (2012) Id., « L’ars plumaria en Amazonie » (2011) ひきつづいてベルトラン・プレヴォーの「イメージ人類学」的…

プレヴォー

Bertrand Prévost, « Pouvoir ou efficacité symbolique des image » (2003) Id., « Figure, figura, figurabilité » (à paraître) Id., « Transporter-transformer » (à paraître) Id., « Inverser-traverser » (à paraître) ベルトラン・プレヴォーは、い…

マニグリエ

Patrice Maniglier, « Dessine-moi un éléphant ». (2010) このところエリー・デューリングと並んで、現代思想と現代美術の双方にまたがる考察を精力的に展開しているパトリス・マニグリエ。芸術論『悪魔の遠近法』(2010)と映画論『フーコー、映画に行く』…

ガタリ

フェリックス・ガタリ『闘走機械』(原著1986) フェリックス・ガタリ、ジル・ドゥルーズ『哲学とは何か』(原著1991) ひきつづいてガタリの『闘走機械(冬の時代)』と『哲学とは何か』(ドゥルーズと共著)の芸術論を読んでみるに、なによりも感覚を重視…

ガタリ

フェリックス・ガタリ『三つのエコロジー』(原著1989) ステファヌ・ナドー〔ステファン・ナドー〕らによる精力的な遺稿出版もあって、このところ再考すべき状況が整いつつあるかにみえるフェリックス・ガタリ。その「機械」や「動的編成」といった概念がミ…

シャステル、ギンズブルグ

アンドレ・シャステル『グロテスクの系譜』(原著1988) カルロ・ギンズブルグ『歴史を逆なでに読む』(2003) ルネサンスのグロテスク模様の装飾を、ミシェル・ド・モンテーニュが自分の『エセー』に重ね合わせたのは有名な話だけれど、これがルネサンスの…

アラス

Daniel Arasse, Léonard de Vinci. Le rythme du monde. (1997) ダニエル・アラスが「運動」という観点からレオナルド・ダ・ヴィンチを論じたこの書物、レオナルドの受容史にも目配せしているところはアラスならではだけれど、それとともにエミール・バンヴ…

デューリング

Élie During, "La compression du monde" (2009) プロトタイプ論のさらなる展開を追いかけるまえに、エリー・デューリングの別系列の現代芸術論も読んでみようと「世界の圧縮」を繙くと、こちらは時間論と密接に連動した話。 情報技術の進展によって現代社会…

デューリング

Élie During, "Du projet au prototype (ou comment éviter d'en faire une oeuvre ?)" (2002) パナマレンコの引用で締め括られていた先日の「プロセスからオペレーションへ」にひきつづき、エリー・デューリングの前年の論考「プロジェクトからプロトタイプ…

デスコラ

Philippe Descola, "Une anthropologie de la figuration" (entretien avec Nikola Jankovic) (2007) Philippe Descola, "Ontologie des images." (2008-2009) 友人たちと細々と読み進めているフィリップ・デスコラのコレージュ・ド・フランス講義「イメージ…

デューリング

Élie During, "Du processus à l'opération" (2003) 科学哲学と美学を股にかけて活躍するエリー・デューリングが1960年代以降のいわゆる「脱物質化」(ルーシー・リパード)していく現代芸術を論じたテクストを読んでみると、「操作(オペレーション)」とい…

パノフスキー

エルヴィン・パノフスキー『イコノロジー研究』(原著1939) かなり久々にエルヴィン・パノフスキーの「時の翁」を読み返してみると、古典古代には基本的に「カイロス」と「アイオーン」の二つの時間概念しかなく、「クロノス」という時間概念は中世〜ルネサ…

 岡本源太『ジョルダーノ・ブルーノの哲学――生の多様性へ』、月曜社、2012年

→ 書きました。よろしければご覧のほどを。 【目次】 はしがき 序章 ジョイス――憐れみの感覚 第一章 ディオ・デ・ラ・テッラ――人間と動物 第二章 セラピス――感情と時間 第三章 コヘレト――無知と力能 第四章 ペルセウス――善悪と共生 第五章 ヘレネ――芸術と創…

鈴木雅雄

鈴木雅雄『シュルレアリスム、あるいは痙攣する複数性』(2007) シュルレアリスムの理論と実践(とりわけ実践)をさながら新たな共同体論として読み解いていく趣の書物。いっさいの超越的な審級を廃したうえでいかにして共同する(ともにある)ことができるか…

アルキエ、シェニウー=ジャンドロン

フェルディナン・アルキエ『シュルレアリスムの哲学』(原著1955) ジャクリーヌ・シェニウー=ジャンドロン『シュルレアリスム』(原著1984) スタロバンスキーはけっこうざっくりとロマン主義の後継に位置づけていたシュルレアリスムの想像力論、実のところはも…

伊藤博明、スタロバンスキー

伊藤博明『ルネサンスの神秘思想』(1995/2012) Jean Starobinski, La relation critique. (1970/2001) イタロ・カルヴィーノによる要約がジャクリーヌ・シェニウー=ジャンドロンによる要約と微妙に違う(大筋では一緒だけれど)と思っていたジャン・スタロ…