The Passing

岡本源太(美学)。書物を通過する軌跡。http://passing.nobody.jp/

クロード・レヴィ=ストロース『みる きく よむ』

クロード・レヴィ=ストロース『みる きく よむ』竹内信夫訳、みすず書房、2005年(原著1993年)


 レヴィ=ストロースは一個の作品のなかにつねに選択を見る。つまり、別様でもありえたなかでなぜこのように実現されたのかを問う。このとき構造とは、その別様の可能性の体系だ。一個の作品が可能性を汲み尽くし、構造を実現することはない。構造はむしろ、プッサンが同じ題材で繰り返し描き直すことを可能にし、そのプッサンの作品に対してディドロらが夢想を紡ぐことを可能にする。知性的分析がしばしば感性的直観のあとを追うばかりなのも、構造をたどるからだ。