The Passing

岡本源太(美学)。書物を通過する軌跡。http://passing.nobody.jp/

人類

松村圭一郎『うしろめたさの人類学』

松村圭一郎『うしろめたさの人類学』、ミシマ社、2017年 社会的紐帯としての感情の共感作用を起点として、市場(交換)と国家(再配分)のあいだに社会(贈与)の空間を開くことが試みられる。もっとも、援助の実践に示されるごとく、市場と国家と社会は截然…

ロージ・ブライドッティ『ポストヒューマン』

ロージ・ブライドッティ『ポストヒューマン――新しい人文学に向けて』門林岳史監訳、フィルムアート社、2019年(原著2013年) ブライドッティによれば、現代の科学技術の発達と政治経済のグローバル化によって、個人主義的な主体性を人間に認めがたくなってき…

ミシェル・セール『人類再生』

ミシェル・セール『人類再生』米山親能訳、法政大学出版局、2006年(原著2001年) セールは人類の文化と認識の発展の起源を、最初期の技術たる動物の家畜化(正確には人間と動物の「相互飼い慣らし」)に見いだす。その要となったのは、分節言語によらない外…

ミシェル・セール『作家、学者、哲学者は世界を旅する』

ミシェル・セール『作家、学者、哲学者は世界を旅する』清水高志訳、水声社、2016年(原著2009年) セールによれば、クロード・レヴィ=ストロースが「野生の思考」と捉え直したようなトーテミズムは、分類操作の基本原理として、自然科学の起源にある。それ…

平倉圭『かたちは思考する』

平倉圭『かたちは思考する』、東京大学出版会、2019年 形象の思考と力とが、形象を布置において理解することで、統合される。布置(dispotision)は構成(composition)に比して分散的であり、巻込の作用によって力を揮い、思考を広げる。ホワイトヘッドから…

ブリュノ・ラトゥール『近代の〈物神事実〉崇拝について——ならびに「聖像衝突」』

ブリュノ・ラトゥール『近代の〈物神事実〉崇拝について——ならびに「聖像衝突」』荒金直人訳、以文社、2017年(原著2009年) 物神崇拝への批判——聖像破壊——は、一度目は人間が物神を作っているのだとして権力の源を物神から人間へと移動させ、二度目は人間が…

『現代の哲学的人間学』、ロータッカー

『現代の哲学的人間学』(原著1972) エーリヒ・ロータッカー『人間学のすすめ』(原著1964) 「哲学的人間学」(あるいは自然人類学や文化人類学と並べて「哲学人類学」と訳してもいいかもしれない)は、日本では1970年代あたりに一挙に翻訳されて研究書も…

デスコラ

Philippe Descola, "Une anthropologie de la figuration" (entretien avec Nikola Jankovic) (2007) Philippe Descola, "Ontologie des images." (2008-2009) 友人たちと細々と読み進めているフィリップ・デスコラのコレージュ・ド・フランス講義「イメージ…

デスコラ

Philippe Descola, "Ontologie des images." (2008-2009) コレージュ・ド・フランスでイメージ論や風景論の講義をしたり、ケ・ブランリー美術館の『イメージの製造』展を監修してみたり、このところいわゆる「イメージ人類学」の急先鋒に躍り出たかに見える…

ツィンマー

ハインリッヒ・ツィンマー『インド・アート』(原著1946) 原題を直訳すると『インドの芸術と文明における神話と象徴』なので、実のところインド美術の図像分析はほとんどなく(期待していたインド美学の紹介もなく)、もっぱらインドの神話の読解と象徴系の…

齋藤晃

齋藤晃『魂の征服』(1993) トドロフとグリーンブラットを読んだときの記憶を掘り起こしつつ、ひきつづいてアメリカ大陸征服の経緯についてあれこれと。こうしたもつれあった思想の鬩ぎあいをたどっていると、過去の「残存」とか「救済」とかいう話は、「解…

大平具彦

大平具彦『二〇世紀アヴァンギャルドと文明の転換』(2009) シュルレアリスムと人類学の接近遭遇をもう少し考えてみようとこの書物を手に取ってみたところ、ヨーロッパのアヴァンギャルドを文化的ハイブリッドとして理解しなおすという企図を見て、なにやら…

ヴァールブルク

アビ・ヴァールブルク『蛇儀礼』(原著1923) あらためて読みなおしてみると、学術論文(発表)のお手本のような構成。書かれたときの状況が状況だけに、たしかに推敲されていないにせよ、ヴァールブルクの基本的な発想がよく見てとれる。とくに、「立ち、歩…

グリーンブラット

スティーヴン・グリーンブラット『驚異と占有』(原著1988) 『マンデヴィルの旅』で語られている多様な風習や宗教への寛容さは、実は遠い他者に関するものであるかぎりで「寛容」というよりも「理論的好奇心」(ブルーメンベルク)であって、その証拠に近い…

トドロフ、グリーンブラット

ツヴェタン・トドロフ『他者の記号学』(原著1982) スティーヴン・グリーンブラット『驚異と占有』(原著1988) グリーンブラットの文体はやはりトドロフに比して読むのに忍耐がいる。ともあれ、どちらの書物でも「翻訳」の問題がおおきく焦点化されていて…

トドロフ

ツヴェタン・トドロフ『他者の記号学』(原著1982) 「他者」の問題を考えるためにヨーロッパによるアメリカの「発見」を取りあげるというトドロフの手つきは、方法論的にはアガンベンの言う「パラダイム」に近しい印象があって、さらにはトドロフのストーリ…

 エラノスで

「エラノス叢書」(井筒俊彦監修、平凡社、1990-1995年) 〈エラノス会議〉に〈観念史クラブ〉――「エラノス叢書」と『観念史事典』(西洋思想大事典)。思想の歴史には関心を寄せる身ながらも、どうにも自分とは縁遠いものに感じられてしまう理由を、長らく…

松枝到

松枝到『外のアジアへ、複数のアジアへ』(1988) 同『アジアとはなにか』(2005) 同『アジア文化のラビリンス』(2007) いまさら言う人も少なくなってきてはいるが、ともあれ「西洋と東洋」と言ったところでそれは地理的にはユーラシアの西側と東側の話に…

 『象徴図像研究』の

『象徴図像研究――動物と象徴』(和光大学総合文化研究所、松枝到編、言叢社、2006年) 『象徴図像研究』第1〜11号、和光大学象徴図像研究会、1987〜1997年 イメージの問題を考えるうえで、いまや「人類学」と「生態学」の視点の重要性を説き謳う声は喧しいも…

ジョイス、今福龍太、ジョイス(宮田恭子)

ジェイムズ・ジョイス『若い芸術家の肖像』(原著1916) 今福龍太『荒野のロマネスク』(初版1989) 宮田恭子『ジョイスと中世文化』(2009) 『荒野のロマネスク』所収のメキシコのコーラ族の音楽論「音と身体のエスノセオリー」、人間の領域と動物の領域の…

今福龍太

今福龍太『荒野のロマネスク』(初版1989) 『荒野のロマネスク』最初の章「荒野のロマネスク」は、もし科学主義批判や客観主義批判として読むのだとすれば、もはや今日ではかつてと状況が変わっているだけに、あまり面白いことにはならなさそう。けれども、…

レヴィ=ストロース

クロード・レヴィ=ストロース『仮面の道』(原著1975) 図像の類似という反復関係に(基本的には)着目するイコノグラフィーに、もし対立や反転というさらなる変換関係を導入できたなら、豊饒な知見を獲得できそうにも思う……ので読みはじめてみる。

今福龍太

今福龍太『野性のテクノロジー』(1995) 異文化の接触の問題(といっても、そもそも文化は接触以外のなにものでもないが)は、ミルチア・エリアーデの宗教史を貫くモチーフでもあったが、近代以降の芸術(シュルレアリスムだけでなく)にとっても想像以上に…

交響するコスモス

中村靖子編『交響するコスモス』(上+下)(2010) 感情論についての論考数篇が収録されているので手にとった『交響するコスモス』は、人文・社会・自然・脳科学にまたがる内容の論文集。目当てだった感情論よりも、マヤ文明の地図や数学の話に思わず惹きこ…

 クロード・レヴィ=ストロース『はるかなる視線』(全2冊、三保元訳、みすず書房、1986年)

クロード・レヴィ=ストロース(Claude Lévi-Strauss, 1908-2009)の三つめの論文集(原著1983年)。『野生の思考』をはじめて手に取ったのがいつだったのかを思い起こすなら、レヴィ=ストロースの書物をそれなりに「読める」ようになるまで、かなりの長い…

 人間と動物と

Gilbert Simondon, Deux leçon sur l'animal et l'homme. Paris : Ellipses, 2004. Lignes, n°28 (HUMANITÉ / ANIMALITÉ), 2009. 『現代思想』2009年7月号(特集「人間/動物の分割線」) 「人間も動物の一種だ」という言葉にはもはやほとんどだれも驚かない…

顔について

Du visage, sous la direction de Marie-José Baudinet et Christian Schlatter, Lille : Presses Universitaires de Lille, 1982.À visage découvert, sous la direction de Georges Didi-Huberman, Paris : Flammarion, 1992. 顔をめぐるふたつの論文集。…

 ジョルジョ・アガンベン『幼児期と歴史―経験の破壊と歴史の起源』(上村忠男訳、岩波書店、2007年)

ジョルジョ・アガンベン(Giorgio Agamben, 1942- )が「歴史」について考察した諸論考を集めた書物(原著は1978年、2001年に増補)。日本語訳されたのであらためて読みなおしたが、かつて中心的に読んだ「時間と歴史」の章よりも「おもちゃの国」の章のほう…