The Passing

岡本源太(美学)。書物を通過する軌跡。http://passing.nobody.jp/

ドゥルーズ、トゥルニエ

かの「プラトン主義の転倒」が現代芸術に適用されるくだり、収束しえない物語の複数性をジェイムズ・ジョイスフィネガンズ・ウェイク』に見いだしながら、さりげなくジョルダーノ・ブルーノに言及している(註ではエーコ『開かれた作品』を挙げているが、これはおそらく邦訳されていない第二部のジョイス論を指示しているようにも思う。のちに独立して『ジョイス詩学』〔Le poetiche di Joyce〕として刊行された箇所)。どうやら無限においてはあらゆる点が無限を包含しているというブルーノの論点を念頭に置いている模様。言われてみればたしかに、この論点を「プラトン主義の転倒」に結びつけなおしてみるのは示唆的なことかもしれない。ただし、無限の実体が「質料(物質)」にほかならないという論点も勘案しなければ、ブルーノによる「プラトン主義の転倒」の理解は十全ではなさそうにも思う。