The Passing

岡本源太(美学)。書物を通過する軌跡。http://passing.nobody.jp/

2006-07-01から1ヶ月間の記事一覧

 アルフォンソ・リンギス『何も共有していない者たちの共同体』(野谷啓二訳、洛北出版、2006年)

アルフォンソ・リンギス(Alphonso Lingis, 1933- )が、共有にもとづかない共同体の在り方を、「死」や「他者」との対面のうちに見いだそうとした書物。 リンギスは、おそらくエマニュエル・レヴィナスに倣い、同じものを共有することにもとづく「理性的〔…

 河本英夫『オートポイエーシス―第三世代システム』(青土社、1995年)

オートポイエーシス・システムを、動的平衡システムおよび動的非平衡システムと対比しつつ、その延長線上に位置づけた書物。オートポイエーシスは、もう何年も前から折に触れて理解しようとしているものの、いまだ漠然とした直観および理解への糸口があるだ…

 山田晶『トマス・アクィナスのキリスト論 (長崎純心レクチャーズ)』(創文社、1999年)

トマス・アクィナスのキリスト論について、歴史的な背景や現代的な意義を見据えつつ、平明に語った講演録。「人間でありかつ神である」というキリストのパラドクシカルな規定をめぐって展開された諸問題に対して、「ひとつのペルソナ、ふたつの本性(ナトゥ…

 ヴィクトル・ストイキツァ『ピュグマリオン効果―シミュラークルの歴史人類学』(松原知生訳、ありな書房、2006年)

ヴィクトル・ストイキツァ(Victor I. Stoichita, 1949- )が、ピュグマリオンの神話の諸変奏をたどりつつ、現実に取って代わるシミュラークルとしてのイメージについて考察した書物。 プラトンによる〈エイコーン/ファンタスマ〉の区別から筆を起こし、「…