The Passing

岡本源太(美学)。書物を通過する軌跡。http://passing.nobody.jp/

2011-01-01から1ヶ月間の記事一覧

グリーンブラット

スティーヴン・グリーンブラット『驚異と占有』(原著1988) 『マンデヴィルの旅』で語られている多様な風習や宗教への寛容さは、実は遠い他者に関するものであるかぎりで「寛容」というよりも「理論的好奇心」(ブルーメンベルク)であって、その証拠に近い…

クブラー

George Kubler, The Shape of Time. (1962) ジョージ・クブラーが展開するプライム・オブジェクトとレプリカの話、数学とか遺伝学とか文学理論とか比較文法とかのメタファーがあれこれ引っ張りだされるものの、率直なところやや中途半端な印象で、最終的には…

カルキア

Gianni Carchia, L'amore del pensiero. (2000) ジャンニ・カルキアが生前最後にまとめたこの書物(出版自体は死後)。初期著作の集成『イメージと真理』を繙いたあとでめくってみると、議論の幅が格段に広がっていて論述ものびやかな印象。第二部第四章「精…

トドロフ、グリーンブラット

ツヴェタン・トドロフ『他者の記号学』(原著1982) スティーヴン・グリーンブラット『驚異と占有』(原著1988) グリーンブラットの文体はやはりトドロフに比して読むのに忍耐がいる。ともあれ、どちらの書物でも「翻訳」の問題がおおきく焦点化されていて…

トドロフ

ツヴェタン・トドロフ『他者の記号学』(原著1982) 「他者」の問題を考えるためにヨーロッパによるアメリカの「発見」を取りあげるというトドロフの手つきは、方法論的にはアガンベンの言う「パラダイム」に近しい印象があって、さらにはトドロフのストーリ…

ダグロン

Tristan Dagron, "Giordano Bruno et la théorie des liens" (1994) トリスタン・ダグロンの論考では最初期のものだが、一性と無限にもとづくジョルダーノ・ブルーノの道徳哲学(あるいは政治哲学)がけっしてアナーキズムにも全体主義にも帰着しないことを…

カルキア

Gianni Carchia, Immagine e verità. (2003) ジャンニ・カルキアの初期著作四作を集成した『イメージと真理』をぱらぱらめくってみると、ヴィンケルマンからゲーレンまで、近現代ドイツ美学こそがカルキアの出発点だったよう。カルキアの専門と見なされてい…

モンザン

Marie-José Mondzain, Image, icône, économie. (1996) マリ=ジョゼ・モンザン『イメージ、イコン、エコノミー』、久々に手に取ってみると、貨幣とイメージの話は意外とあっさりとしか書いていない。かわりに、「エコノミー」の概念史にわりと多く頁を割い…