The Passing

岡本源太(美学)。書物を通過する軌跡。http://passing.nobody.jp/

2011-01-01から1年間の記事一覧

ラトゥール

Bruno Latour, "Some Experiments in Art and Politics" (2011) ブリュノ・ラトゥールがトマス・サラセーノの作品(Galaxies forming along filaments, like droplets along the strands of a spider's web)をとりあげている短文があったので、友人たちと読…

ツィンマー

ハインリッヒ・ツィンマー『インド・アート』(原著1946) 原題を直訳すると『インドの芸術と文明における神話と象徴』なので、実のところインド美術の図像分析はほとんどなく(期待していたインド美学の紹介もなく)、もっぱらインドの神話の読解と象徴系の…

ポーコック

ジョン・ポーコック『徳・商業・歴史』(原著1985) ひきつづきポーコックの論文集。第二章に所収の「徳、権利、作法」を再読したら、こちらもようやく咀嚼できるようになってきているよう。政治に関して、「法」(神や自然も含め)をモデルにした思考に対し…

ポーコック、木村俊道

ジョン・ポーコック『マキァヴェリアン・モーメント』(原著1975) 木村俊道『文明の作法』(2010) 繙くたびに挫折するポーコックの書物。イタリアのヒューマニズムがイギリスの道徳哲学に引き継がれていった経緯についてようやく自分なりに関心にひっかけ…

ジルソン、ナルディ、川添信介

Étienne Gilson, Études de philosophie médiévale. (1921) Bruno Nardi, Saggi sull'aristotelismo padovano dal secolo XIV al XVI. (1958) 川添信介『水とワイン』(2005) いわゆる「二重真理説」の問題の広がりを確認しようとあれこれ繙いてみると、ジ…

パンシャール

ブリュノ・パンシャール『形而上学的探究』(2009) 知らないうちにブリュノ・パンシャールの来日講演録が出ていた(市販されてないので気づかなかったのも仕方ないかも)。2008年の関西学院大学での講演(パスカル)は聴講したものの、ほかの会場のもの(ダ…

ダイヤモンド、カヴェル、マクダウェル、ハッキング、ウルフ

コーラ・ダイヤモンド、スタンリー・カヴェル、ジョン・マクダウェル、イアン・ハッキング、ケアリー・ウルフ『〈動物のいのち〉と哲学』(原著2008) まだぱらぱらと捲ってみたところだけれど、スタンリー・カヴェルをめぐる論集といった趣もあり、『観られ…

スピノザ(上野修)

上野修『精神の眼は論証そのもの』(1999) 上野修『スピノザ』(2006) 哲学と宗教の分離についてスピノザが考えたこと(とその思想史的状況)をおさらいしようと、二冊繙く。おそらくはアヴェロエス(主義)の「二重真理説」に淵源するものだろうけれど、…

コッチャ

Emanuele Coccia, "Physique du sensible. Penser l'image au Moyen Age" (2010) アヴェロエスのイメージ論で一書をものしているエマヌエーレ・コッチャならではと言うべきか、おもに鏡の経験を軸にしながら、西洋中世のイメージ論を縦横無尽に引用している…

武満徹

武満徹『エッセイ選』(2008) 武満徹『対談選』(2008) いまとなってはいくぶん紋切り型とも思えてしまう西洋近代批判が散見されるのは措くとして、思い通りに操作しきれない個々の音の在り方が楽器の歴史性に結びついていることが示唆されていて、まずそ…

市川浩

市川浩『現代芸術の地平』(1985) わずかばかりとはいえ現代芸術を囓って楽しんでいる身としては、感覚から想像や理性へと階層を積み上げていくような認識論はどうも実感にそぐわないが、その同じ違和感をもっていたのだろうか、この書物では感覚や知覚や想…

ラトゥール

Bruno Latour, Politiques de la nature. (1999) 生態学的な発想がますます活況を呈している観があるこのところ、ラトゥールによるエコロジー論にも目を通しておきたい(生態学[écologie scientifique]というよりエコロジー[écologie politique]がメインの書…

ラトゥール、カロン、ロー

ブルーノ・ラトゥール「理性の知らないネットワーク――実験室、図書館、収集館」(原著1996) ミシェル・カロン、ジョン・ロー「個と社会の区分を超えて――集団性についての科学技術社会論からの視座」(原著1997) いまさら気づいたが、『科学を考える』(北…

齋藤晃

齋藤晃『魂の征服』(1993) トドロフとグリーンブラットを読んだときの記憶を掘り起こしつつ、ひきつづいてアメリカ大陸征服の経緯についてあれこれと。こうしたもつれあった思想の鬩ぎあいをたどっていると、過去の「残存」とか「救済」とかいう話は、「解…

多木浩二

多木浩二『神話なき世界の芸術家』(1994) 個人的にはむかしアンゼルム・キーファー論を面白く読んだ記憶のある多木浩二によるバーネット・ニューマン論を繙いてみると、これまた面白く読む。現象学や崇高論やカバラーを援用した解釈に禁欲的なところに親近…

ルヴァイヤン

フランソワーズ・ルヴァイヤン『記号の殺戮』(1995) これもむかしから存在は知っていたものの手に取ったことのなかった『記号の殺戮』。この書物は(というかルヴァイヤンの書物自体!)どうやら日本語でしか存在しない模様。アンドレ・マッソンを中心に、…

フェルマン

フェルディナント・フェルマン『現象学と表現主義』(原著1982) むかしから存在は知っていたものの手に取ったことのなかった『現象学と表現主義』。時代精神みたいなものから哲学と芸術を類比する怪しげな「精神史」話かと思いきや、これがなかなか地に足つ…

大平具彦

大平具彦『二〇世紀アヴァンギャルドと文明の転換』(2009) シュルレアリスムと人類学の接近遭遇をもう少し考えてみようとこの書物を手に取ってみたところ、ヨーロッパのアヴァンギャルドを文化的ハイブリッドとして理解しなおすという企図を見て、なにやら…

谷川渥

谷川渥『シュルレアリスムのアメリカ』(2009) 慎ましいタイトルながら、シュルレアリスムから抽象表現主義にいたる動向が多面的に切り出されていて、一息に読んでしまう。「眼は野生の状態で存在する」というブルトンの名高い言葉も含め、シュルレアリスム…

カヴェル

Stanley Cavell, The World Viewd. (1971/79) スタンリー・カヴェルの『観られた世界』、とくにシネフィルでもない身としてはどうにもとりつく島もない映画よもやま話が長々と続き、俳優のスターシステムやら映画の窃視性やらの指摘はカヴェルの専売特許とい…

江村公

江村公『ロシア・アヴァンギャルドの世紀』(2011) 20世紀初頭のロシアは芸術にかぎらず多方面で異才を輩出しているけれど、絶対主義(シュプレマティスム)と構成主義の先鋭さにあらためて驚嘆。絶対主義が色彩派で構成主義が線描派という分類もいろいろと…

マラン

Louis Marin, De la représentation. (1994) 美術史と精神分析をめぐるルイ・マランのインタビューを読んでみると、ピエール・フェディダとけっこう交流があったよう。マランの「表象」や「形象」の理論の(隠れた?)影響力は侮れないが、その畢竟とも言う…

ダグロン

Tristan Dagron, Toland et Leibniz. (2009) 思弁的実在論の「ブルーノ問題」でいちばん問題になっていたブルーノの「実体」概念についてもういちど取り組んでみようとなると、まずはやはりトリスタン・ダグロンによる研究を咀嚼する必要あり。論文「『原因…

ブラシエ、グラント、ハーマン、メイヤスー

Ray Brassier, Iain Hamilton Grant, Graham Harman, and Quentin Meillassoux. "Speculative Realism." (2007) 思弁的実在論のそもそもの賭金はなにか、ということで2007年のワークショップの記録を繙くと、レイ・ブラシエの発表が4人の論点を要領よくまと…

ハーマン、グラント

Graham Harman, "On the Undermining of Objects: Grant, Bruno, and the Radical Philosophy" (2011) Iain Hamilton Grant, "Mining Conditions: A Response to Harman" (2011) なおも思弁的実在論における「ブルーノ問題」。論文集『思弁的転回――大陸哲学…

ハーマン、グラント

Graham Harman, "On the Undermining of Objects: Grant, Bruno, and the Radical Philosophy" (2011) Iain Hamilton Grant, "Mining Conditions: A Response to Harman" (2011) すこし時間をかけてあとづけている思弁的実在論における「ブルーノ問題」。ま…

 思弁的転回へ

Ray Brassier, Iain Hamilton Grant, Graham Harman, and Quentin Meillassoux. "Speculative Realism," in Collapse, vol. 3, 2007. Levi Bryant, Nick Srnicek and Graham Harman, eds. The Speculative Turn: Continental Materialism and Realism. Melbo…

ハーマン、グラント

Graham Harman, "On the Undermining of Objects: Grant, Bruno, and the Radical Philosophy" (2011) Iain Hamilton Grant, "Mining Conditions: A Response to Harman" (2011) 先ごろ刊行された論文集『思弁的転回――大陸哲学の唯物論と実在論』(The Specu…

トクヴィル(富永茂樹)

富永茂樹『トクヴィル』(2010) 名前しか知らなかったトクヴィル。「諸条件の平等」のパラドクスをめぐる思索のあとをたどってみると、ミシェル・フーコーやマルセル・ゴーシェなどの現代フランス政治哲学の背後にある厚みを痛感させられる。鎖の解体や部分…

シェリング(松山壽一)、ジャンケレヴィッチ(三河隆之)

松山壽一『人間と悪』(2004) 三河隆之「ジャンケレヴィッチの人称論」(2009) ジョルダーノ・ブルーノの〈相反の一致〉は(クザーヌスといくぶん違って)倫理学化されているのが特徴的だけれど、それを忠実に継承したジェイムズ・ジョイスの考えを別にす…