The Passing

岡本源太(美学)。書物を通過する軌跡。http://passing.nobody.jp/

2010-08-01から1ヶ月間の記事一覧

クルアーン(小杉泰)、張彦遠(宇佐美文理)

小杉泰『クルアーン』(2009) 宇佐美文理『歴代名画記』(2010) 絵画に描かれているとおりに画家はものを見ている、と考えてしまう粗雑な心理学者や現象学者は論外としても、ともすれば認識プロセスと制作プロセスは一直線に結びつけられてしまう。張彦遠…

ペイター

ウォルター・ペイター『ガストン・ド・ラトゥール』(原著1896/改訂版1995) 「すべての芸術はたえず音楽の状態に憧れる」という言葉しか知らなかったウォルター・ペイター。この言葉は『ルネサンス』のなかに記されているとのことだが、同じルネサンスを舞…

ブルーノ、小浜善信、グラナダ

Giordano Bruno, Camoeracensis Acrotismus seu rationes articulorum physicorum adversus Peripateticos. (1588) 小浜善信「永遠と時間――プロティノスからトマスまで」(1998) Miguel Ángel Granada, "El concepto de tiempo en Bruno: tiempos cósmicos …

風間喜代三、アガンベン

風間喜代三『ことばの生活誌』(1987) Giorgio Agamben, Signatura rerum. Sul metodo. (2008) 風間喜代三『ことばの生活誌』、どうしてこれまでこれを読んでいなかったのか。あの浩瀚なバンヴェニストに挑戦しては挫折していた身には、滅法面白い一冊。哲…

風間喜代三、アガンベン

風間喜代三『印欧語の故郷を探る』(1993) Giorgio Agamben, Signatura rerum. Sul metodo. (2008) インド=ヨーロッパ祖語にかぎらず、おおよそ「起源」を求めるときにまず第一に躓きとなるのは、いったい「共同体」なる概念をどのようなものとして理解す…

風間喜代三、アガンベン

風間喜代三『言語学の誕生』(1978) Giorgio Agamben, Signatura rerum. Sul metodo. (2008) 比較文法におけるアナロジーの用い方、その恣意性を回避するために実際の歴史的状況を参照するというやり方は、なんだかヴァールブルクのイコノグラフィーにどこ…

ノヴァーリス、風間喜代三

ノヴァーリス「断章と研究」(1799-1800) 風間喜代三『言語学の誕生』(1978) ノヴァーリスが最晩年の「断章と研究」に書き残したスピノザについての言葉を調べるべく、ひとまず邦訳であたりをつけようと手に取った二つの『ノヴァーリス全集』。牧神社版(…

アガンベン

Giorgio Agamben, Signatura rerum. Sul metodo. (2008) ひきつづいてアガンベン『事物のしるし』。チョムスキーの「生成文法」に言及しているのは、なんともおざなりなその言及の仕方を見るにつけ、たんに「比較文法」との語呂合わせをしたかったのではない…

アガンベン

Giorgio Agamben, Signatura rerum. Sul metodo. (2008) アガンベンが哲学的考古学の探究する「アルケー」を宇宙論の「ビッグバン」になぞらえているあたり、ベンヤミン的な「渦」はもう聞き飽きたのでそれなりに面白く思ったものの、ふとジョージ・クブラー…

ジョイス、ヌスバウム、アガンベン

ジェイムズ・ジョイス『ダブリン市民』(原著1914) マーサ・ヌスバウム『感情と法』(原著2004) Giorgio Agamben, Signatura rerum. Sul metodo. (2008) ジェイムズ・ジョイスの「死者たち」にちょこっと登場する「三美神」と「パリスの審判」、その解釈の…

アガンベン

Giorgio Agamben, Signatura rerum. Sul metodo. (2008) ジョルジョ・アガンベン『事物のしるし』、「哲学的考古学」の章を再読しはじめてみるも、おそらく意図的にエトムント・フッサールについて沈黙していることの意味をいまだ推し量りかねている。この書…

トマス、ジョイス、アガンベン

Thomas Aquinas, Summa theologiae. James Joyce, "The Bruno Philosophy." (1903) ジョルジョ・アガンベン『王国と栄光』(原著2007) かの有名な〈 natura naturans / natura naturata 〉の対概念。アヴェロエスのラテン語訳で導入されたとか、いやエリウ…

アガンベン

ジョルジョ・アガンベン『王国と栄光』(原著2007) 再読しはじめてみると、「摂理」の話あたりに、ルネサンスのプラトン主義における一者と自然の理解にも資する論点がちらほら。 ただ、ルネサンス=近世を飛ばして中世と近代を「系譜」の名のもとに結びつ…