The Passing

岡本源太(美学)。書物を通過する軌跡。http://passing.nobody.jp/

クブラー

  • George Kubler, The Shape of Time. (1962)

あらためて読み直してみるとジョージ・クブラー、「様式論か図像学か」で二極化していた五〇〜六〇年代のアメリカの美術史業界情勢をまえにしてこの本を書いたのだろうなという印象が強かったり。これが七〇年代になると「フレンチ・セオリー」の洗礼によってアメリカの業界勢力図がすっかり変わってしまって、クブラーの試みも忘れられていったのかもしれないが、ともあれ、たしかに基本的な芸術観は少々素朴と思わせなくもないし、時間論のあたりもいまとなってはやや中途半端な感が拭いきれず。といって、ばっさり切り捨ててしまうのはもったいないのもたしか。