The Passing

岡本源太(美学)。書物を通過する軌跡。http://passing.nobody.jp/

心理

立木康介

立木康介「ラカン派1964-」(2010) 立木康介「日本精神分析史の黎明」(2010) 立木康介、十川 幸司、原 和之「〈座談会〉来るべき精神分析のために」(2010) 考えてみれば、理論というものも受容史を見据えると(へんに具体例を挙げるよりも)クリアにな…

希望学

東京大学社会科学研究所編『希望学[1]希望を語る』(2009) 社会科学に「希望」という視点を導入することの賭金は、一つには、社会問題の心理主義化ないし個体化という傾向(「自己決定」や「自己責任」はその端的なあらわれ)を逆手にとって、「希望」と…

宮崎広和、荒川修作(塚原史)

宮崎広和『希望という方法』(2009) 塚原史『荒川修作の軌跡と奇跡』(2009) 社会科学における「希望」という視点は、情念論の現代的な一変形のような気もして、なんとなく気になるところ。とはいえそれ以上に、方法として見られた「希望」は、その時間構造か…

情念論のために

Les passions antiques et médiévales, sous la direction de Bernard Besnier, Pierre-François Moreau et Laurence Renault, Paris : PUF, 2003.Les passions à l'âge classique, sous la direction de Pierre-François Moreau, Paris : PUF 2006. 古代か…

 マルク・リシール『身体―内面性についての試論』(和田渡、加國尚志、川瀬雅也訳、ナカニシヤ出版、2001年)

マルク・リシール(Marc Richir, 1943- )が、身体からの/への「超過」という視点から、身体の現象学、心身問題、身体の思想史などを簡略に論じたもの。リシールは、「心」を実体化することなく、身体からの/への多様な「超過」の在り方として、感覚、情緒…

 信原幸弘編『シリーズ心の哲学〈2〉ロボット篇』(勁草書房、2004年)

おもに人工知能の研究やロボット工学をめぐる/にもとづく「心の哲学」の論文集。古典的計算主義vsコネクショニズムやフレーム問題などがコンパクトに概観されており、全体の見通しを得るのに適した論文集のように思う。個人的な関心から、とくに力学系にも…

 キャシー・カルース『トラウマ・歴史・物語 持ち主なき出来事』(下河辺美知子訳、みすず書房、2004年)

キャシー・カルースが「トラウマ」概念をめぐって、フロイト、ラカン、ド=マン、レネ+デュラスらの作品を考察した書物。カルースは、フロイトの「快原理の彼岸」や『人間モーセと一神教』をもとにして、トラウマを「ある危機的な出来事を、それと知らぬ間…

 河野哲也『環境に拡がる心―生態学的哲学の展望 (双書エニグマ)』(勁草書房、2005年)

生態学的な存在論の視点から、身体、他人、言語、技術、動物、自由を捉えなおした書物。「心」なるものをそれ自体として取りだして考察することがいかに問題があるかを、前著『エコロジカルな心の哲学』にひきつづき明晰かつ説得的に論じていて面白い。内的…

 中山康雄『共同性の現代哲学―心から社会へ (双書エニグマ)』(頸草書房、2004年)

言語行為論や心の哲学の知見から、共同性について分析した書物。コミュニケーションや会話を、コードモデルや推論モデルではなく、一連の行為の連鎖として分析するというのは重要な視点だろう。だが、〈心/身体〉〈自/他〉〈個人/集団〉といった区別がや…