The Passing

岡本源太(美学)。書物を通過する軌跡。http://passing.nobody.jp/

江村公

20世紀初頭のロシアは芸術にかぎらず多方面で異才を輩出しているけれど、絶対主義(シュプレマティスム)と構成主義の先鋭さにあらためて驚嘆。絶対主義が色彩派で構成主義が線描派という分類もいろいろと示唆的だけれど、なにより面白いのは、カジミール・マレーヴィチの絶対主義が、モダニズム的還元主義の極北どころか、徹底した「分散」が可能にする新たなる生成という壮大な形而上学的ヴィジョンに裏打ちされていたらしいところ。その謎めいた「エコノミー」論といい、色彩への独特のアプローチといい、よくここまで考えたものだと思う。