The Passing

岡本源太(美学)。書物を通過する軌跡。http://passing.nobody.jp/

ハーマン、グラント

  • Graham Harman, "On the Undermining of Objects: Grant, Bruno, and the Radical Philosophy" (2011)
  • Iain Hamilton Grant, "Mining Conditions: A Response to Harman" (2011)

先ごろ刊行された論文集『思弁的転回――大陸哲学の唯物論と実在論』(The Speculative Turn: Continental Materialism and Realism, edited by Levi Bryant, Nick Srnicek and Graham Harman, Melbourne, Re.Press, 2011)、ブリュノ・ラトゥールも寄稿している(しかもエティエンヌ・スーリオについて!)と思って入手したものの、そのまま放っていたのをようやく開いてみると、グレアム・ハーマンとイエイン・ハミルトン・グラントがジョルダーノ・ブルーノの質料論(物質論)を軸に論争していて驚く。

経緯としては、ハーマンがグラントの思想をブルーノ哲学に重ねあわせたうえで、その「前個体主義」に共通の難点を指摘、それに対してグラントが反論する、というもの。にわかに調べてみると、すでに2007年のロンドン大学でのワークショップ「思弁的実在論」の時点で、ハーマンはグラントがブルーノに類似していると感じていたよう。グラントの専門がシェリングなのであればブルーノと類似していてもなにも不思議ではないが、〈言語論的転回〉に背を向けて新たな方向に突き進んでいる〈思弁的転回〉のただなかに「ブルーノ問題」(グラント)が湧出したとなれば、黙って見過ごせない。少々時間をかけて丁寧に論点を拾っておきたいと思う。

ハーマンのブログを見てみると、今回は批判を展開しているものの、実はかなりブルーノに傾倒しているらしい。