The Passing +

岡本源太(美学)。書物を通過する軌跡。http://passing.nobody.jp/

政治

ルイ・マラン『王の肖像』

ルイ・マラン『王の肖像』渡辺香根夫訳、法政大学出版局、2002年 (原著1981年) マランによれば、権力は表象としてしか存在しないという。というのも権力が成立するためには実際の物理的な暴力が潜在化され、さらに制度化されねばならず、表象こそがこの暴…

ルイ・マラン『ユートピア的なもの』

ルイ・マラン『ユートピア的なもの』梶野吉郎訳、法政大学出版局、1995年(原著1973年) ユートピアの中立性が、ただ現実社会からの分離独立というだけのことであれば、それは共通のイデオロギーに取り込まれている。そうではないユートピアの中立性は、あれ…

アーミテイジ

David Armitage, "What's the Big Idea? Intellectual History and the Longue Durée" (2012) このところ思想史に「長期持続(Longue durée)」の視点が回帰してきているとして、イギリスの政治思想史家デイヴィッド・アーミテイジが、新たな「観念のなかの…

シュミット

カール・シュミット『ハムレットもしくはヘカベ』(原著1956) 「世界劇場」の発想一つ見るだけでも、ルネサンスにおける芸術(虚構)と政治(現実)の関係が一筋縄ではいかないのは当然のこと。カール・シュミットによるシェイクスピア『ハムレット』論を繙…

ガタリ

フェリックス・ガタリ『三つのエコロジー』(原著1989) ステファヌ・ナドー〔ステファン・ナドー〕らによる精力的な遺稿出版もあって、このところ再考すべき状況が整いつつあるかにみえるフェリックス・ガタリ。その「機械」や「動的編成」といった概念がミ…

シュミット、ヘラー=ローゼン

カール・シュミット「海賊行為の概念」(原著1937) 同『陸と海と』(原著1942) ダニエル・ヘラー=ローゼン「万人の敵」(原著2009) 陸(ビヒモス)と海(レヴィヤタン)という「エレメント」の鬩ぎ合いから世界史を読み解いた古典的著作として名高いカー…

カントーロヴィチ

エルンスト・カントーロヴィチ『王の二つの身体』(原著1957) 西洋中世に、永遠と時間との中間としての「永久〔aevum〕」概念が登場することによって、「法人」概念の成立が促されたという、カントーロヴィチのよく知られた話。このとき援用される「質料は…

ポーコック

ジョン・ポーコック『徳・商業・歴史』(原著1985) ひきつづきポーコックの論文集。第二章に所収の「徳、権利、作法」を再読したら、こちらもようやく咀嚼できるようになってきているよう。政治に関して、「法」(神や自然も含め)をモデルにした思考に対し…

ポーコック、木村俊道

ジョン・ポーコック『マキァヴェリアン・モーメント』(原著1975) 木村俊道『文明の作法』(2010) 繙くたびに挫折するポーコックの書物。イタリアのヒューマニズムがイギリスの道徳哲学に引き継がれていった経緯についてようやく自分なりに関心にひっかけ…

ラトゥール

Bruno Latour, Politiques de la nature. (1999) 生態学的な発想がますます活況を呈している観があるこのところ、ラトゥールによるエコロジー論にも目を通しておきたい(生態学[écologie scientifique]というよりエコロジー[écologie politique]がメインの書…

トクヴィル(富永茂樹)

富永茂樹『トクヴィル』(2010) 名前しか知らなかったトクヴィル。「諸条件の平等」のパラドクスをめぐる思索のあとをたどってみると、ミシェル・フーコーやマルセル・ゴーシェなどの現代フランス政治哲学の背後にある厚みを痛感させられる。鎖の解体や部分…

モンザン

Marie-José Mondzain, Image, icône, économie. (1996) マリ=ジョゼ・モンザン『イメージ、イコン、エコノミー』、久々に手に取ってみると、貨幣とイメージの話は意外とあっさりとしか書いていない。かわりに、「エコノミー」の概念史にわりと多く頁を割い…

アガンベン

ジョルジョ・アガンベン『王国と栄光』(原著2007) 再読しはじめてみると、「摂理」の話あたりに、ルネサンスのプラトン主義における一者と自然の理解にも資する論点がちらほら。 ただ、ルネサンス=近世を飛ばして中世と近代を「系譜」の名のもとに結びつ…

 ミシェル・ド・セルトー『ルーダンの憑依』(矢橋透訳、みすず書房、2008年)

ミシェル・ド・セルトー(Michel de Certeau, 1925-1986)が、一七世紀にフランスはルーダンの修道院で起こった集団悪魔憑き事件について著した書物(原著1970年)。ジャンヌ・デ・ザンジュをはじめとするルーダンの修道女たちが、ある日から突発的に奇怪な…

 ブリュノ・ラトゥール『科学論の実在』(川崎勝、平川秀幸訳、産業図書、2007年)

ブリュノ・ラトゥール(Bruno Latour, 1947- )が、「主体−客体」の対を「複数の人間−複数の人間でないもの」の集合体へと置き換えながら、みずからの「実在論」哲学を展開した書物。「絶対的な客観性」と「社会や権力による構築性」との闘争が実は一致して…

 キャシー・カルース『トラウマ・歴史・物語 持ち主なき出来事』(下河辺美知子訳、みすず書房、2004年)

キャシー・カルースが「トラウマ」概念をめぐって、フロイト、ラカン、ド=マン、レネ+デュラスらの作品を考察した書物。カルースは、フロイトの「快原理の彼岸」や『人間モーセと一神教』をもとにして、トラウマを「ある危機的な出来事を、それと知らぬ間…

 イザベル・スタンジェール『科学と権力―先端科学技術をまえにした民主主義』(吉谷啓次訳、松籟社、1999年)

イザベル・スタンジェール(1949- )が、現代社会における科学をめぐる「政治」について論じた書物。現代社会において、科学を専門としない人々にとっては、科学の専門家が言うことを「黙って受け入れる」か「闇雲に反発する」かの二択しかないように見える…

 ロラン・バルト『現代社会の神話―1957 (ロラン・バルト著作集 3)』(下澤和義訳、みすず書房、2005年)

ロラン・バルト(1915-1980)が、現代フランスにおいて「あたりまえのこと」と思われているものを「神話」として分析した書物。「神話」は、なにかを覆い隠したり、あるいは顕示したりはしない。ただ、変形し、屈折する。屈折=妥協形成。のちには〈デノテー…

 市野川容孝『身体/生命 (思考のフロンティア)』(岩波書店、2000年)

生死の概念が西洋の医学においてどのように捉えられてきたかを、その政治的な側面を視野に入れつつ辿った書物。「西洋」と一語でいったところでその内実は多様で複合的であり、決して一枚岩ではないため、当然「生死」の概念も多様な変遷を経ている。脳死や…

 水島茂樹『“解放”の果てに―個人の変容と近代の行方』(ナカニシヤ出版、2003年)

とりわけジョン・メイナード・ケインズとマルセル・ゴーシェを主な導きの糸として、現代社会を「経済」と「他者」から解放されつつある社会として論じた書物。啓蒙が進めば進ほど人は成熟できなくなっていく。このパラドクスは啓蒙に内在的な論理の帰結であ…

 宇野重規『政治哲学へ―現代フランスとの対話 (公共哲学叢書)』(東京大学出版会、2004年)

近年、これまでになく活況を見せている現代フランスの政治哲学を、ときに英語圏の政治哲学と対比しつつ概観した書物。現代フランスの政治哲学は、ひとつには、デモクラシーのパラドクスをめぐって展開されていると捉えることができるようだ。みずからの外部…

 マーティン・ジェイ『暴力の屈折―記憶と視覚の力学』(谷徹、谷優訳、岩波書店、2004年)

マーティン・ジェイ(1944- )によって書かれた、イメージ、暴力、戦争、歴史などのテーマ系が交差する論文・批評集。フロイトによって提起された「喪」と「メランコリー」の対比にもとづきつつ、「トラウマ」概念によってこうしたテーマ系を語るというのは…