2006-01-01から1年間の記事一覧
エルンスト・カッシーラー(Ernst Cassirer, 1874-1945)が、「象徴」という観点から、人間の特異性を考察し、神話と宗教、言語、芸術、歴史、科学の諸領域を論じた書物。実体としてではなく関数=機能として、静的なものではなく動的なものとして、人間の本…
おもに、ウィリアム・オッカムの「直観」を軸にした認識論とトマス・アクィナスの「抽象」を軸にした認識論とを対比しながら、中世後期における認識、実在、記号、学知、魂などの捉え方の変異を辿った書物。中世の認識論が今日理解しにくくなっている要因の…
エルヴィン・パノフスキー(Erwin Panofsky, 1892-1968)が、ヨーロッパにおける美や芸術についての議論のなかに「イデア」概念の変遷を辿った書物。芸術理論のなかで、〈模倣/表現〉、〈外界/内面〉、〈感覚的なもの/知性的なもの〉、〈客観/主観〉とい…
ピエール・フランカステル(Pierre Francastel, 1900-1970)による、美術史の方法論や芸術作品の在り方についての諸論考(原著は1965年)。フランカステルは、言うまでもなく「芸術の社会学」の先駆のひとりだが、今日「芸術の社会学」と聞いて思い起こされ…
ミシェル・セール(Michel Serres, 1930- )が〈普遍性/特異性〉の結びつきを「小枝」という語のもとで考察した書物(原著は2004年)。この書物で重要なのは、後半の「出現」および「今日」のふたつの章のように思う。たしかに前半についてもセールが一貫し…
ジョルジュ・ディディ=ユベルマン(Georges Didi-Huberman, 1953- )が、アウシュヴィッツの四枚の写真を分析しつつ、表象不可能性に対してイメージや想像の重要性を論じた書物。翻訳されたのであらためて読み返したが、イメージについての思想の射程の広が…
エンゲルハルト・ヴァイグル(Engelhard Weigl, 1943- )が、ガリレオからフンボルトにいたる近代の科学器具の使用について、思想的、歴史的、社会的な角度から考察した書物。望遠鏡、顕微鏡、寒暖計、時計、測量器、避雷針など、17世紀から18世紀にかけて発…
アルフォンソ・リンギス(Alphonso Lingis, 1933- )が、共有にもとづかない共同体の在り方を、「死」や「他者」との対面のうちに見いだそうとした書物。 リンギスは、おそらくエマニュエル・レヴィナスに倣い、同じものを共有することにもとづく「理性的〔…
オートポイエーシス・システムを、動的平衡システムおよび動的非平衡システムと対比しつつ、その延長線上に位置づけた書物。オートポイエーシスは、もう何年も前から折に触れて理解しようとしているものの、いまだ漠然とした直観および理解への糸口があるだ…
トマス・アクィナスのキリスト論について、歴史的な背景や現代的な意義を見据えつつ、平明に語った講演録。「人間でありかつ神である」というキリストのパラドクシカルな規定をめぐって展開された諸問題に対して、「ひとつのペルソナ、ふたつの本性(ナトゥ…
ヴィクトル・ストイキツァ(Victor I. Stoichita, 1949- )が、ピュグマリオンの神話の諸変奏をたどりつつ、現実に取って代わるシミュラークルとしてのイメージについて考察した書物。 プラトンによる〈エイコーン/ファンタスマ〉の区別から筆を起こし、「…
ホルスト・ブレーデカンプ(Horst Bredekamp, 1947- )による、「クンストカンマー」の歴史をたどった書物。ブレーデカンプによれば、クンストカンマー、ストゥディオーロ、キャビネなどに蒐集された品々は、「自然物−古代彫刻−人工物−機械」という系列のも…
ピエール・レヴィ(Pierre Lévy, 1956- )が、virtuelと呼ばれるものを、hétérogénèseという視点から広く人類学的に位置づけ、考察した書物。ひところジャン・ボードリヤールやポール・ヴィリリオなどの名前とともに流行ったヴァーチャル化による「現実の喪…
中世スコラ哲学における天使論や聖霊論を、コミュニケーション論や身体論として読み解いていく書物。この書物の中心的な問題となっている「純粋なコミュニケーションを目指すことがコミュニケーションの排除に陥ってしまう」という「天使主義」のパラドクス…
ヘレニズムからビザンティンにかけてのキリスト教の教義論争を辿ることで、「個」としての「ヒュポスタシス=ペルソナ」という概念が形成されていく過程を辿った書物。東欧のギリシア教父たちによる三位一体論やキリスト論が、アリストテレス的な存在論を論…
おもに人工知能の研究やロボット工学をめぐる/にもとづく「心の哲学」の論文集。古典的計算主義vsコネクショニズムやフレーム問題などがコンパクトに概観されており、全体の見通しを得るのに適した論文集のように思う。個人的な関心から、とくに力学系にも…
〈本体/あらわれ〉の分割およびそのうちの「あらわれ」の形成と密接に関わる「遠近法」を、その前史たる「背景画(skenographia)」や「光学(optika, perspectiva)」の変遷を辿りながら考察した書物。おもにギリシアからヘレニズムに重点が置かれつつ、興…
ジョナサン・クレーリーが、近代の視覚/観察者における17〜18世紀と19世紀との切断面について、科学史と美術史と哲学史を統合的に扱いながら論じた書物。個人的には、フーコー的な「切断」によって歴史を捉えようとは思わないし、まして歴史を「構築」と見…
ジョルジュ・ディディ=ユベルマン(1953- )が、アビ・ヴァールブルクの美術史の方法論を、「残存」に集約される特異な時間性の観点から、同時代や先行/後続の美術史、哲学、人類学、精神分析学と照応/対比しつつ論じた書物。ディディ=ユベルマン自身の…