- スティーヴン・グリーンブラット『ルネサンスの自己成型』(原著1980)
ブルクハルト的な「ルネサンスにおける人間の発見」のテーゼを発展的に継承するとこうなるのかといった感のグリーンブラットの「ルネサンスの自己成型」のテーゼ。「ルネサンスになると自己は成型されうるものだという感覚が登場した」というテーゼの単純さとは裏腹に、実際の分析は微に入り細を穿っていて、かなりの知識がないと議論を追えなかったりも。そのぶん、あらためて読みなおしても示唆的。それだけに、個人的欲望vs社会的構築のような図式がちらついてしまうのは、少々もったいなくもあり。人間の生の多様性や可塑性といったものを、結局は選択肢の問題としてしか考えられていないからかもしれない。