The Passing

岡本源太(美学)。書物を通過する軌跡。http://passing.nobody.jp/

フェルマン

むかしから存在は知っていたものの手に取ったことのなかった『現象学表現主義』。時代精神みたいなものから哲学と芸術を類比する怪しげな「精神史」話かと思いきや、これがなかなか地に足ついた本格的フッサール論で、エポケーから生(活)世界に軸足を移していくフッサールの歩みを表現主義的な「脱現実化的現実化」の深化として捉えていて、面白く読む。
表現主義の芸術作品としてしっかり分析されているのは実のところ祖型とも言うべきホフマンスタールと、終焉を飾るムージルくらいしかないが(ただしほかに多くの批評が言及される)、表現主義との相互交流によってこそ現象学がたんなる歴史的エピソードにおわらない影響力を獲得できたことが指摘されるところに、納得させられる。フェルマン独自の「アクチュアリティ」の考え方が窺える。