ルヴァイヤン
- フランソワーズ・ルヴァイヤン『記号の殺戮』(1995)
これもむかしから存在は知っていたものの手に取ったことのなかった『記号の殺戮』。この書物は(というかルヴァイヤンの書物自体!)どうやら日本語でしか存在しない模様。アンドレ・マッソンを中心に、現代美術におけるオートマティスム、エクリチュール、神話、そして夢の問題が扱われているが、マッソンとピラネージ、シュルレアリストとエンブレム・ブックなど、ひっそりと「残存」の問題が(古代神話の残存よりも広い残存の問題が)あちこち顔を覗かせているところに惹きつけられる。基本的に記述に徹する文体という感じで、大きく視野が開けるとか転換されるといった印象はあまりないものの、的確な見取り図を与えてくれる――というか問題の所在をはっきりさせてくれる――し、なにより作品の魅力がよく伝わってくるように思う。そしていくたびかマッソンとデ・キリコの類似を示唆しているのが気になってしまう。