大平具彦
- 大平具彦『二〇世紀アヴァンギャルドと文明の転換』(2009)
シュルレアリスムと人類学の接近遭遇をもう少し考えてみようとこの書物を手に取ってみたところ、ヨーロッパのアヴァンギャルドを文化的ハイブリッドとして理解しなおすという企図を見て、なにやらとても腑に落ちる思いをする。プリミティヴィスムの動向を強調しすぎていないかという疑念もたしかにありうるだろうにせよ、それでもアヴァンギャルドの雑多で雑食的な性格(とうてい「ヨーロッパ」に収まりはしないその雑食性)はもっと留意されてしかるべきだろう。いわゆる「ポストモダン」論議がいまとなっては見る影もないのは、均一で単一の「モダン」像を自分で作り上げては壊そうとしているかのようなものだったからだ、という思いを新たにする。
しかしエドゥアール・グリッサンが読みたくなる。今年に惜しくも亡くなってしまったことだし。