The Passing

岡本源太(美学)。書物を通過する軌跡。http://passing.nobody.jp/

谷川渥

慎ましいタイトルながら、シュルレアリスムから抽象表現主義にいたる動向が多面的に切り出されていて、一息に読んでしまう。「眼は野生の状態で存在する」というブルトンの名高い言葉も含め、シュルレアリスムと人類学との接近遭遇というのは、ジェイムズ・クリフォードによって言い尽くされたわけではまったくなく、むしろまだまだこれから考えるべき主題との思いを強くする。シュルレアリスムオートマティスムから抽象表現主義のドリッピングまで、そこに「バイオモーフィズム」が顔を覗かせるのも気になるところ。想像力と偶然性が結びあわされたところに、なぜ微生物的世界が映し出されてくるのだろう。