2011-08-21 市川浩 哲学 美学 芸術 読書 市川浩『現代芸術の地平』(1985) わずかばかりとはいえ現代芸術を囓って楽しんでいる身としては、感覚から想像や理性へと階層を積み上げていくような認識論はどうも実感にそぐわないが、その同じ違和感をもっていたのだろうか、この書物では感覚や知覚や想像の一方通行でない錯綜した関係が考察されていて、面白く読む。とはいえ、この書物の前半に多い理論化の試みもそこそこに、後半のほうの芸術家のモノグラフのほうばかり読んでしまうのは、結局「錯綜」や「複雑」といったことの内実に踏み込もうとするとモノグラフがいちばん近道だったりするからだろうか。