The Passing

岡本源太(美学)。書物を通過する軌跡。http://passing.nobody.jp/

パンシャール

  • ブリュノ・パンシャール『形而上学的探究』(2009)

知らないうちにブリュノ・パンシャールの来日講演録が出ていた(市販されてないので気づかなかったのも仕方ないかも)。2008年の関西学院大学での講演(パスカル)は聴講したものの、ほかの会場のもの(ダンテ、マルブランシュ、ヴィーコ)は聴きに行けなかっただけに嬉しいかぎり。ちゃんとフランス語原文も収録されているのもありがたいところ。
書き下ろしらしき序文をめくってみると、パンシャールは最近はどうやら「ポストヒューマニズム」を掲げているよう。かつてはふつうに「ヒューマニズムへの回帰」を標榜していた気もするけれど、ルネサンスヒューマニズムへの理解を欠いた「アンチヒューマニズム」的な批判が横行していて、誤解されがちだから名前を変えたのかもしれない……などと勝手なことを思ったりもする。
すでにエウジェニオ・ガレンが指摘しているし、長らくパンシャールも、また最近ではロベルト・エスポジトも主張しているけれど、ルネサンスのいわゆる「ヒューマニズム」が人間中心主義だとかおめでたい理想主義だとかではまったくなく、むしろ安定した人間像と世界像を危機に陥れたものだということは、いまひとつ理解されていないように思う。パンシャールの場合、この危機への対峙として「形而上学」を捉えるところがユニークだったりも。