The Passing

岡本源太(美学)。書物を通過する軌跡。http://passing.nobody.jp/

スピノザ(上野修)

哲学と宗教の分離についてスピノザが考えたこと(とその思想史的状況)をおさらいしようと、二冊繙く。おそらくはアヴェロエス(主義)の「二重真理説」に淵源するものだろうけれど、当時の(デカルト主義)哲学者にとって一般的だったこの「二重真理説」にたいして、スピノザは宗教を真理から切り離して、敬虔(もっと言えば共同体の形成)のみを割り当て、真理探究としての哲学との棲み分けを打ち立てようとしたという。
この話だけだと、実はジョルダーノ・ブルーノも同じだったりするものの(ブルーノも、宗教や聖書は真理探求とは無関係で、ただ人間の共同体の形成を目的とするのみ、と言っていたりする)、その背後に「群衆の力能」にもとづく共同体論が控えているのは、スピノザならではだろうか。ともあれ、たしかにスピノザは17世紀では孤独だったかもしれないが、この二重真理説の「変質」とでも言うべきものの起源に遡っていくと、ブルーノを越えて、ニッコロ・マキアヴェッリの『ディスコルシ』があるような気もする。