The Passing

岡本源太(美学)。書物を通過する軌跡。http://passing.nobody.jp/

武満徹

いまとなってはいくぶん紋切り型とも思えてしまう西洋近代批判が散見されるのは措くとして、思い通りに操作しきれない個々の音の在り方が楽器の歴史性に結びついていることが示唆されていて、まずそこに惹きつけられる。もしももういちど音楽について考えてみるとするなら、今度は「聴取」でなくて「楽器」のことを調べてみるべきなのかもしれない。ペーター・サンディの言うオルガノジーではないけれど。楽器の変遷というのは、「洋の東西」などという小さな話を突き崩す地理的なスケールをもっているし、西洋近代の雑食性にも繋がっていく主題のように思う。琵琶の変遷に対する武満の関心も、調べていけばそこに到達するかもしれない。