The Passing

岡本源太(美学)。書物を通過する軌跡。http://passing.nobody.jp/

ツィンマー

原題を直訳すると『インドの芸術と文明における神話と象徴』なので、実のところインド美術の図像分析はほとんどなく(期待していたインド美学の紹介もなく)、もっぱらインドの神話の読解と象徴系の解説がつづいていく印象。とはいえ、神話自体が面白く、ストーリーテリングが巧みなので、読んでいて飽きない。「マーヤー」の秘密を対立するものの一致に見たり、永遠の真理によって無常なるこの世の価値すべてが相対化されたあとふたたび世俗の価値が回復していく道筋を示したりするあたりも、個人的に既視感があって面白く読む。ミルチア・エリアーデを読みなおしたくなる。