The Passing

岡本源太(美学)。書物を通過する軌跡。http://passing.nobody.jp/

哲学

老子(神塚淑子)、アウグスティヌス(松崎一平)、塩川徹也

神塚淑子『老子』(2009) 松崎一平『告白』(2009) 塩川徹也『発見術としての学問――モンテーニュ、デカルト、パスカル』(2010) デカルトが20歳のときの学位論文の献辞なるものが、塩川徹也『発見術としての学問』で仏訳から重訳されていたので、なにげな…

朱子(木下鉄矢)

木下鉄矢『朱熹哲学の視軸――続朱熹再読』(2009) とりわけ第六章の「「事」「物」「事物」「事事物物」」がタイトルからして迫力満点だが、この書物全体を通して朱熹における「事・こと」と「物・もの」の理解が徹底的に問いなおされていると言えるか。山田…

朱子(木下鉄矢)、荘子(中島隆博)

木下鉄矢『朱子』(2009) 中島隆博『荘子』(2009) この二冊の書物を読むかぎり、意識を取り払えば万物の無差別があらわになるという仏教的な発想とむしろ相反するような、いわば個体性と差異を掬いあげる戦略を、荘子にも朱子にも見いだせるよう。 それに…

スフラワルディー(鈴木規夫)、アヤダ

鈴木規夫『光の政治哲学』(2008) Souâd Ayada, L'islam des théophanies. Structure métaphysique et formes esthétiques. (2009) イスラーム美学を理解しようとするなら(つまりイスラーム文化の生み出した芸術をきっぱりと思想から切り離してしまうので…

ジュリアン

フランソワ・ジュリアン『勢』(原著1992) 「比較」という方法の第一の陥没はニュアンスの掻き消された(あるいは歴史のない)のっぺりした理解を生み出してしまうことだが(これは比較項が固定されてしまうとすぐさま生じる)、総体としての「西洋」なるも…

謝赫、福永光司、クルアーン(小杉泰)

謝赫『古画品録』(6世紀前後) 福永光司『中国の哲学・宗教・芸術』(1988) 小杉泰『クルアーン』(2009) モーセ、イエス、ムハンマド、それぞれがおこなったとされる「奇跡」の違いが面白い。モーセでは呪術師との対決が、イエスでは医師との対決が背景…

ペイター

ウォルター・ペイター『ガストン・ド・ラトゥール』(原著1896/改訂版1995) 「すべての芸術はたえず音楽の状態に憧れる」という言葉しか知らなかったウォルター・ペイター。この言葉は『ルネサンス』のなかに記されているとのことだが、同じルネサンスを舞…

ブルーノ、小浜善信、グラナダ

Giordano Bruno, Camoeracensis Acrotismus seu rationes articulorum physicorum adversus Peripateticos. (1588) 小浜善信「永遠と時間――プロティノスからトマスまで」(1998) Miguel Ángel Granada, "El concepto de tiempo en Bruno: tiempos cósmicos …

風間喜代三、アガンベン

風間喜代三『ことばの生活誌』(1987) Giorgio Agamben, Signatura rerum. Sul metodo. (2008) 風間喜代三『ことばの生活誌』、どうしてこれまでこれを読んでいなかったのか。あの浩瀚なバンヴェニストに挑戦しては挫折していた身には、滅法面白い一冊。哲…

風間喜代三、アガンベン

風間喜代三『印欧語の故郷を探る』(1993) Giorgio Agamben, Signatura rerum. Sul metodo. (2008) インド=ヨーロッパ祖語にかぎらず、おおよそ「起源」を求めるときにまず第一に躓きとなるのは、いったい「共同体」なる概念をどのようなものとして理解す…

風間喜代三、アガンベン

風間喜代三『言語学の誕生』(1978) Giorgio Agamben, Signatura rerum. Sul metodo. (2008) 比較文法におけるアナロジーの用い方、その恣意性を回避するために実際の歴史的状況を参照するというやり方は、なんだかヴァールブルクのイコノグラフィーにどこ…

アガンベン

Giorgio Agamben, Signatura rerum. Sul metodo. (2008) ひきつづいてアガンベン『事物のしるし』。チョムスキーの「生成文法」に言及しているのは、なんともおざなりなその言及の仕方を見るにつけ、たんに「比較文法」との語呂合わせをしたかったのではない…

アガンベン

Giorgio Agamben, Signatura rerum. Sul metodo. (2008) アガンベンが哲学的考古学の探究する「アルケー」を宇宙論の「ビッグバン」になぞらえているあたり、ベンヤミン的な「渦」はもう聞き飽きたのでそれなりに面白く思ったものの、ふとジョージ・クブラー…

ジョイス、ヌスバウム、アガンベン

ジェイムズ・ジョイス『ダブリン市民』(原著1914) マーサ・ヌスバウム『感情と法』(原著2004) Giorgio Agamben, Signatura rerum. Sul metodo. (2008) ジェイムズ・ジョイスの「死者たち」にちょこっと登場する「三美神」と「パリスの審判」、その解釈の…

アガンベン

Giorgio Agamben, Signatura rerum. Sul metodo. (2008) ジョルジョ・アガンベン『事物のしるし』、「哲学的考古学」の章を再読しはじめてみるも、おそらく意図的にエトムント・フッサールについて沈黙していることの意味をいまだ推し量りかねている。この書…

トマス、ジョイス、アガンベン

Thomas Aquinas, Summa theologiae. James Joyce, "The Bruno Philosophy." (1903) ジョルジョ・アガンベン『王国と栄光』(原著2007) かの有名な〈 natura naturans / natura naturata 〉の対概念。アヴェロエスのラテン語訳で導入されたとか、いやエリウ…

アガンベン

ジョルジョ・アガンベン『王国と栄光』(原著2007) 再読しはじめてみると、「摂理」の話あたりに、ルネサンスのプラトン主義における一者と自然の理解にも資する論点がちらほら。 ただ、ルネサンス=近世を飛ばして中世と近代を「系譜」の名のもとに結びつ…

ジョイス、ジョイス=ブルーノ(ダウンズ)

James Joyce, "The Day of the Rabblement." (1901) Gareth Joseph Downes, "The Heretical Auctoritas of Giordano Bruno: The Significance of the Brunonian Presence in James Joyce's The Day of the Rabblement and Stephen Hero." (2003) 蒙昧な群衆…

ジョイス、ダグロン

James Joyce, "The Bruno Philosophy." (1903) Tristan Dagron, « Coïncidence et contrariété chez Bruno et Nicolas de Cues » (2007) ジェイムズ・ジョイスがジョルダーノ・ブルーノから汲み取った最大の思想は「相反の一致」だ――というのは、たしかにそ…

ジョイス、カントロヴィチ、ダグロン

James Joyce, "The Bruno Philosophy." (1903) エルンスト・カントロヴィチ『祖国のために死ぬこと』(1993) Tristan Dagron, Unité de l'être et dialectique. L'idée de philosophie naturelle chez Giordano Bruno. (1999) 久々再読のカントロヴィチ。ペ…

フィチーノ、ダグロン

Marsilio Ficino, « Pallas, Iuno, Venus, vita contemplativa, activa, voluptuosa » (1490) Tristan Dagron, « Le Timée de Marsile Ficin : Providence et nécessité » (2000) ルネサンスにおける「一者」の理解の仕方が存在と摂理との分離を帰結するとい…

ブルーノ、ジョイス、ヴィント、サラ=モランス、ダミッシュ

Giordano Bruno, De gli eroici furori. (1585) ジェイムズ・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク』(原著1939) Edgar Wind, Pagan Mysteries in the Renaissance. (2nd ed. 1968) ルイ・サラ=モランス『ソドム』(原著1991) Hubert Damisch, Le Jugement d…

ジョイス、サラ=モランス、ダグロン

ジェイムズ・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク』(原著1939) ルイ・サラ=モランス『ソドム』(原著1991) Tristan Dagron, « La doctrine des quelités occultes dans le De incantationibus de Pomponazzi » (2007) ルネサンスにおける奇跡や呪術の「自…

サラ=モランス、ダグロン

ルイ・サラ=モランス『ソドム』(原著1991) Tristan Dagron, « Les êtres contrefaits d'un monde malade. La nature et ses monstres à la Renaissance : Montaigne et Vanini » (2005) モンテーニュとヴァニーニ(そしてカルダーノとポンポナッツィも少…

 ブリュノ・ラトゥールによる

Iconoclash. Beyond the Image Wars in Science, Religion and Art, edited by Bruno Latour and Peter Weibel, Cambridge, Mass., MIT Press, 2002. Making Things Public. Atmospheres of Democracy, edited by Bruno Latour and Peter Weibel, Cambridge,…

アガンベン、門林岳史

ジョルジョ・アガンベン『言葉と死』(原著1982) 門林岳史『ホワッチャドゥーイン、マーシャル・マクルーハン?』(2009) 20世紀最大の「ブルーノ主義者」と言うべきジェイムズ・ジョイスのこともそろそろちゃんと考えはじめてみるべきかと思い立ち、マー…

ダグロン

Tristan Dagron, "Toland and the censorship of atheism" (2009) 宗教(あるいはもっと広く言って「信」)の問題は、当然と言えば当然ながら、思ったほど単純でない。トリスタン・ダグロンがレヴィ=ストロースの「象徴的効果」を参照しているのは少々意外…

ブルーノ、バダローニ

Giordano Bruno, La cena de le ceneri. (1584) Id., Spaccio de la bestia trionfante. (1584) Id., De vinculis in genere. (c.1591) Nicola Badaloni, ​​L​a​ ​f​i​l​o​s​o​f​i​a​ ​d​i​ ​G​i​o​r​d​a​n​o​ B​r​u​n​o. (1955) ブルーノの質料論は、『原因…

フィチーノ、グラナダ、坂本賢三

Marsilio Ficino, "De divino furore" (1457) Miguel Ángel Granada, "Amor, spiritus, melancolia" (1984) 坂本賢三『科学思想史』(1984) 「精気」を「身体」と「魂」との媒介として位置づける(ちょうど想像力を感性と知性〔悟性〕の媒介として位置づけ…

ブルーノ、坂本賢三

Giordano Bruno, La cena de le ceneri. (1584) Id., De la causa, principio et uno. (1584) 坂本賢三「マテリエ・フォルム・インハルト」(1971) ブルーノによる「質料」概念の捉えなおしは比較的よく知られているにせよ、それが哲学と医学の混同に対する…