The Passing

岡本源太(美学)。書物を通過する軌跡。http://passing.nobody.jp/

哲学

カヴェル

Stanley Cavell, The World Viewd. (1971/79) スタンリー・カヴェルの『観られた世界』、とくにシネフィルでもない身としてはどうにもとりつく島もない映画よもやま話が長々と続き、俳優のスターシステムやら映画の窃視性やらの指摘はカヴェルの専売特許とい…

マラン

Louis Marin, De la représentation. (1994) 美術史と精神分析をめぐるルイ・マランのインタビューを読んでみると、ピエール・フェディダとけっこう交流があったよう。マランの「表象」や「形象」の理論の(隠れた?)影響力は侮れないが、その畢竟とも言う…

ダグロン

Tristan Dagron, Toland et Leibniz. (2009) 思弁的実在論の「ブルーノ問題」でいちばん問題になっていたブルーノの「実体」概念についてもういちど取り組んでみようとなると、まずはやはりトリスタン・ダグロンによる研究を咀嚼する必要あり。論文「『原因…

ブラシエ、グラント、ハーマン、メイヤスー

Ray Brassier, Iain Hamilton Grant, Graham Harman, and Quentin Meillassoux. "Speculative Realism." (2007) 思弁的実在論のそもそもの賭金はなにか、ということで2007年のワークショップの記録を繙くと、レイ・ブラシエの発表が4人の論点を要領よくまと…

ハーマン、グラント

Graham Harman, "On the Undermining of Objects: Grant, Bruno, and the Radical Philosophy" (2011) Iain Hamilton Grant, "Mining Conditions: A Response to Harman" (2011) なおも思弁的実在論における「ブルーノ問題」。論文集『思弁的転回――大陸哲学…

ハーマン、グラント

Graham Harman, "On the Undermining of Objects: Grant, Bruno, and the Radical Philosophy" (2011) Iain Hamilton Grant, "Mining Conditions: A Response to Harman" (2011) すこし時間をかけてあとづけている思弁的実在論における「ブルーノ問題」。ま…

 思弁的転回へ

Ray Brassier, Iain Hamilton Grant, Graham Harman, and Quentin Meillassoux. "Speculative Realism," in Collapse, vol. 3, 2007. Levi Bryant, Nick Srnicek and Graham Harman, eds. The Speculative Turn: Continental Materialism and Realism. Melbo…

ハーマン、グラント

Graham Harman, "On the Undermining of Objects: Grant, Bruno, and the Radical Philosophy" (2011) Iain Hamilton Grant, "Mining Conditions: A Response to Harman" (2011) 先ごろ刊行された論文集『思弁的転回――大陸哲学の唯物論と実在論』(The Specu…

シェリング(松山壽一)、ジャンケレヴィッチ(三河隆之)

松山壽一『人間と悪』(2004) 三河隆之「ジャンケレヴィッチの人称論」(2009) ジョルダーノ・ブルーノの〈相反の一致〉は(クザーヌスといくぶん違って)倫理学化されているのが特徴的だけれど、それを忠実に継承したジェイムズ・ジョイスの考えを別にす…

アンサルディ

Saverio Ansaldi, Giordano Bruno. Une philosphie de la métamorphose. (2010) やたらと「métamorphose」ばかり繰り返す冗長さは措くとして、ブルーノの政治思想の再構成に際して、「権利なき法」などの刺激的な論点をうまく取り出しているように思う。少々…

カヴェル

Stanley Cavell, The World Viewd. (1971/79) スタンリー・カヴェルの『観られた世界』、おもに映画と他ジャンルとの比較を頼りにして分析が進んでいくが、その分析の進展にあわせて分析の道具立てそれ自体も練り上げていくあたり、ふとロラン・バルトの手つ…

カルキア

Gianni Carchia, L'amore del pensiero. (2000) ジャンニ・カルキアが生前最後にまとめたこの書物(出版自体は死後)。初期著作の集成『イメージと真理』を繙いたあとでめくってみると、議論の幅が格段に広がっていて論述ものびやかな印象。第二部第四章「精…

ダグロン

Tristan Dagron, "Giordano Bruno et la théorie des liens" (1994) トリスタン・ダグロンの論考では最初期のものだが、一性と無限にもとづくジョルダーノ・ブルーノの道徳哲学(あるいは政治哲学)がけっしてアナーキズムにも全体主義にも帰着しないことを…

カルキア

Gianni Carchia, Immagine e verità. (2003) ジャンニ・カルキアの初期著作四作を集成した『イメージと真理』をぱらぱらめくってみると、ヴィンケルマンからゲーレンまで、近現代ドイツ美学こそがカルキアの出発点だったよう。カルキアの専門と見なされてい…

モンザン

Marie-José Mondzain, Image, icône, économie. (1996) マリ=ジョゼ・モンザン『イメージ、イコン、エコノミー』、久々に手に取ってみると、貨幣とイメージの話は意外とあっさりとしか書いていない。かわりに、「エコノミー」の概念史にわりと多く頁を割い…

五十嵐一

五十嵐一『イスラーム・ルネサンス』(1986) 第六章「“秤”の学――イスラーム的知の相貌」の話、よくある「世界の調和」の話と言ってしまえばそれまでかもしれないが、エウクレイデス(ユークリッド)がイスラームに導入されたときにその幾何学より比例論が重…

五十嵐一

五十嵐一『イスラーム・ルネサンス』(1986) イスラーム美学を論じた「コーランにおける創造観――自己作品化の美学」の章が気になって繙いてみたこの書物、それより次の章「変心の神秘――イスラーム的構造変動論」を面白く読む。「変身」が、変化していると見…

アンサルディ

Saverio Ansaldi, Giordano Bruno. Une philosphie de la métamorphose. (2010) サヴェリオ・アンサルディ、2006年の『自然と力能――ブルーノとスピノザ』は、ブルーノ論としてはちょっと入門書的というか概説的で物足りなかったものの、今年刊行のこちら『ジ…

ガレン、パンシャール

Eugenio Garin, Medioevo e Rinascimento. (1954) Bruno Pinchard, La Raison dédoublée.(1992) どのインタビューだったか、たしかミシェル・フーコーは「ヒューマニズムはルネサンスではなくて一九世紀の発明だ」という主旨のことを強調していたことがあ…

ドゥルーズ、トゥルニエ

ジル・ドゥルーズ『意味の論理学』(原著1969) ミシェル・トゥルニエ『イデーの鏡』(原著1994) かの「プラトン主義の転倒」が現代芸術に適用されるくだり、収束しえない物語の複数性をジェイムズ・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク』に見いだしながら、…

スピノザ、ワイエルス、エスポジト

Baruch (Benedictus) de Spinoza, Etica. (1677) Olga Weijers, "Contribution à l'histoire des termes 'natura naturans' et 'natura naturata' jusqu'à Spinoza. (1978) Roberto Esposito, Pensiero vivente. Origine e attualità della filosofia italia…

エスポジト

Roberto Esposito, Pensiero vivente. Origine e attualità della filosofia italiana. (2010) ロベルト・エスポジト、イタリア哲学の起源に遡る第二章でマキアヴェッリ、ブルーノ、ヴィーコを取り上げているが、ブルーノの話では「ペルソナ概念の批判」と「…

ジョイス、エスポジト

James Joyce, "L'influenza letteraria universale del rinascimento." (1912) Roberto Esposito, Pensiero vivente. Origine e attualità della filosofia italiana. (2010) ジェイムズ・ジョイスがイタリア語で著した論考「ルネサンスの世界文学的影響」は…

清水純一、エスポジト

清水純一『ルネサンスの偉大と頽廃』(1972) Roberto Esposito, Pensiero vivente. Origine e attualità della filosofia italiana. (2010) ブルーノの生涯をざっとおさらいということで、久々に読み直した清水純一の新書。最終章でブルーノの哲学を、言っ…

エスポジト

Roberto Esposito, Pensiero vivente. Origine e attualità della filosofia italiana. (2010) 基本的に政治哲学か政治思想史の著作ばかりの印象があるロベルト・エスポジトだったが、ルネサンス以来のイタリア哲学史を辿りなおすことでイタリア現代思想を位…

ジョイス=ブルーノ(フェルカー、ラバテ)

Joseph Voelker, "Nature it is: The Influence of Giordano Bruno on James Joyce's Molly Bloom." (1976) Jean-Michel Rabaté, "Bruno No, Bruno Si: Note on a Contradiction in Joyce" (1989) ドイツの新カント主義的哲学史が教科書レヴェルで普及したせ…

ブルーノ(ガッティ)

Hilary Gatti, "The Natural Philosophy of Giordano Bruno" (2002) ヒラリー・ガッティの主著『ジョルダーノ・ブルーノとルネサンス科学』(1999)はタイトルからしてフランセス・イエイツへの対決姿勢を打ち出しているが、この論文でもなかなかのイエイツ…

 エラノスで

「エラノス叢書」(井筒俊彦監修、平凡社、1990-1995年) 〈エラノス会議〉に〈観念史クラブ〉――「エラノス叢書」と『観念史事典』(西洋思想大事典)。思想の歴史には関心を寄せる身ながらも、どうにも自分とは縁遠いものに感じられてしまう理由を、長らく…

井筒俊彦

井筒俊彦『イスラーム哲学の原像』(1980) 同『意識と本質』(1983) 〈一〉と〈多〉という伝統的な問題をそのまま「分節されていないもの」と「分節されたもの」とに置き換えて理解することはひとつの常套と化しているような気もするものの、このときえて…

バガヴァット・ギーター(赤松明彦)、マルクス・アウレリウス(荻野弘之)

赤松明彦『バガヴァット・ギーター』(2008) 荻野弘之『自省録』(2009) 思想史研究ではもはやひところのような「比較」という方法は使えないと感じるものの、インド=ヨーロッパ祖語の研究はじめ、『バガヴァット・ギーター』受容史の研究などでも、比較…