The Passing

岡本源太(美学)。書物を通過する軌跡。http://passing.nobody.jp/

フィチーノ、グラナダ、坂本賢三

  • Marsilio Ficino, "De divino furore" (1457)
  • Miguel Ángel Granada, "Amor, spiritus, melancolia" (1984)
  • 坂本賢三『科学思想史』(1984

「精気」を「身体」と「魂」との媒介として位置づける(ちょうど想像力を感性と知性〔悟性〕の媒介として位置づけるように)のは、ある意味で定番の説明という気もするものの、ガレノス的な医学理論を引き継いでいるフィチーノには当て嵌まりこそすれ、ルネサンスの想像力論一般に拡大するのは無理な気もする。極論してしまえば、この位置づけは「抽象」というアリストテレス主義的な認識モデルの内部でしか意味をなさないように思う。
にしても坂本賢三『科学思想史』は、目配せの広さが尋常でないのに簡潔な記述で(ほかの論文や書物では目配せに比例して記述も厖大なことしばし)、最初に読む西洋思想史(科学史に限定されず)の書物として最良のものとの印象。紙幅の関係で削られたという部分は、どこかに遺稿として残っていないものか。