The Passing

岡本源太(美学)。書物を通過する軌跡。http://passing.nobody.jp/

ジョイス、ジョイス=ブルーノ(ダウンズ)

  • James Joyce, "The Day of the Rabblement." (1901)
  • Gareth Joseph Downes, "The Heretical Auctoritas of Giordano Bruno: The Significance of the Brunonian Presence in James Joyce's The Day of the Rabblement and Stephen Hero." (2003)

蒙昧な群衆から身を引き離し、ひとり孤独に真理を目指す哲学者=芸術家――という形象も、ジェイムズ・ジョイスがジョルダーノ・ブルーノから(教会の権威主義[に染まった群衆]との戦いのなかで?)継承したことは充分ありうるとして、とはいえ、こうした哲学者=芸術家像は、もしもそれだけなのだとしたら、あまりに陳腐なものに見える。ブルーノのこの主張の根底には、真理と人間の関係をめぐる特異な発想(おそらくロマン主義とは異質な発想)があって、ジョイスにとってもそちらのほうこそが重要だったのではないかとか、想像されたりもする。