The Passing

岡本源太(美学)。書物を通過する軌跡。http://passing.nobody.jp/

ダグロン

  • Tristan Dagron, "Toland and the censorship of atheism" (2009)

宗教(あるいはもっと広く言って「信」)の問題は、当然と言えば当然ながら、思ったほど単純でない。トリスタン・ダグロンがレヴィ=ストロースの「象徴的効果」を参照しているのは少々意外に思えたものの、宗教や神話を哲学や科学に還元不可能なものとして考えようとすれば、たしかにレヴィ=ストロースは参照すべきように思う。それと同時に、「迷信」と「無神論」をともに退けるジョン・トーランド(とその霊感源たるジョルダーノ・ブルーノ)が「宗教」を社会的紐帯(道徳)の問題として考えているという点も、その人文主義的(文献学的)な理性観と言語観と相俟って、この問題の意外なほどの広がりを示唆しているようにも思う。