The Passing

岡本源太(美学)。書物を通過する軌跡。http://passing.nobody.jp/

ジュリアン

  • フランソワ・ジュリアン『』(原著1992)

「比較」という方法の第一の陥没はニュアンスの掻き消された(あるいは歴史のない)のっぺりした理解を生み出してしまうことだが(これは比較項が固定されてしまうとすぐさま生じる)、総体としての「西洋」なるものとの比較をつねに念頭においているジュリアンの中国哲学理解には、そのきらいがなくはない。とはいえ、中国の芸術論がすべてをプロセスのなかで考えようとして、いわば徹底した「プラクシス」の視点に立っていることが強く印象づけられる。けれどもこの視点だけでは、なぜ中国でかくも多くの絵画論が(散佚したものを含めれば千をも超える文献が)書かれたのか、つまり絵画を言葉で「残そう」としたのか、うまく理解できないようにも思う。