トマス、ジョイス、アガンベン
- Thomas Aquinas, Summa theologiae.
- James Joyce, "The Bruno Philosophy." (1903)
- ジョルジョ・アガンベン『王国と栄光』(原著2007)
かの有名な〈 natura naturans / natura naturata 〉の対概念。アヴェロエスのラテン語訳で導入されたとか、いやエリウゲナが起源だとか、諸説紛々で起源はいまだよく分からないものの、少なくともトマス・アクィナス『神学大全』(第2-1部第85問第6項)には神が〈natura narturans〉と呼ばれていると報告されているのだから、スピノザがこの語で神を指し示したことはさして重要ではないように思う。
むしろ重要なのは〈natura naturata〉の位置づけの変化であって、だからこそジェイムズ・ジョイスは「ブルーノは〈natura naturata〉に共感を寄せた」と書いたのかもしれない。ブルーノは(現存の著作では)この語を一度も使ったことがないにせよ(もっとも、〈natura naturans〉のほうは、イタリア語「natura naturante」のかたちで、『原因論』に一回だけ、しかもほとんど重要でない仕方で登場しているが)。