The Passing

岡本源太(美学)。書物を通過する軌跡。http://passing.nobody.jp/

ジョイス、カントロヴィチ、ダグロン

  • James Joyce, "The Bruno Philosophy." (1903)
  • エルンスト・カントロヴィチ『祖国のために死ぬこと』(1993)
  • Tristan Dagron, Unité de l'être et dialectique. L'idée de philosophie naturelle chez Giordano Bruno. (1999)

久々再読のカントロヴィチ。ペトラルカを筆頭に、ルネサンス(の少なくとも初期)の人文学者たち(いわゆるシヴィックヒューマニストたち)はだれもが法学者としての修練を積んだ教会関係者だったのだから、ローマ法と教会法が重要な発想源となりえたという指摘には、あらためて説得される。
とはいうものの、ルネサンスの「神のごとき」芸術家の発想源になったという、一三世紀以来の「神による創造」と「人間による立法」とのアナロジーの根底には、おそらくカントロヴィチが踏み込んでいない「意志」の問題があって、そこにはなにかしら変動があるようにも感じるが、はたして。