The Passing

岡本源太(美学)。書物を通過する軌跡。http://passing.nobody.jp/

アガンベン

  • Giorgio Agamben, Signatura rerum. Sul metodo. (2008)

ひきつづいてアガンベン『事物のしるし』。チョムスキーの「生成文法」に言及しているのは、なんともおざなりなその言及の仕方を見るにつけ、たんに「比較文法」との語呂合わせをしたかったのではないかという疑念もちらほら。さすがに穿ちすぎかもしれない。「今日の人文科学の認識論パラダイムで優位にある認知科学的モデル」云々という話になったら、ふつうチョムスキーよりも先に言及しそうなラネカーの「認知文法」あたりでは、「比較文法」との対比的ニュアンスがあまりうまくでないと考えたということもありうるかもしれない(知名度の差という要因はこの際おいておくとして)。そう考えると、アガンベンが綺麗に図式化しすぎた〈歴史学vs生物学〉(ないし〈人文科学vs自然科学〉?)という構図は、アガンベンが言及しなかった認知言語学によってすでに突き崩されつつあると考えることもできるかもしれない。