2005-01-01から1年間の記事一覧
エマニュエル・レヴィナスとジャック・ラカンとを類比させつつ読んでいく書物。死者の名のもとに倫理や正義を根拠づけようとする思考が孕む欺瞞を鋭く指摘しているように思う。正義や倫理について語ろうとするとき、死者(あるいは弱者、プロレタリアートで…
近年、これまでになく活況を見せている現代フランスの政治哲学を、ときに英語圏の政治哲学と対比しつつ概観した書物。現代フランスの政治哲学は、ひとつには、デモクラシーのパラドクスをめぐって展開されていると捉えることができるようだ。みずからの外部…
カルロ・ギンズブルグ(1939- )による1998年に刊行された論文集。ギンズブルグはこの本で、「イメージ」「表象」「異化」「虚構」「スタイル」「パースペクティヴ」といった概念を、語源やあるいは古代の用法に遡って考察している。語源学的な分析は、ハン…
ミシェル・ド・セルトー(1925-1986)による歴史記述についての論考。理論的考察と具体的な宗教史の記述(さらにはフロイトのテクスト)とを往還しながら考察が展開される。セルトーの歴史記述理論の核心は、「過去について」「現在において」書くという行為…
歴史の言説を「物語り」概念によって分析したアーサー・ダントー(1924- )の最初の著作(1965年)。ダントーがこの本で試みているのは、「歴史の仕事は過去をありのままに追体験すること」という歴史主義への徹底した反駁と言えるが、それを歴史言説の論理…
ジョルジョ・アガンベン(1942- )の『幼年期と歴史』から「時間と歴史」を読む。歴史にはかならず特定の時間経験(表象ではなく)が伴っている、として、アガンベンはアンリ=シャルル・ピュエシュを参照しつつ、ギリシア=ローマにおける円環としての時間…
ジョルジョ・アガンベン(1942- )の1975年の論文「アビ・ヴァールブルクと名前のない科学」(1983年に補遺が書かれた)を読む。イタリア語のは入手できていないので、さしあたり『イメージと記憶』に所収のフランス語訳で。アガンベンはヴァールブルクの方…
ジャック・ル=ゴフ(1924- )による歴史の歴史、および歴史科学の方法論についての考察。ル=ゴフは、「歴史とは過去の再構築である」という視点から実証主義と歴史主義を批判するアナール派の歴史家だけあって、歴史における〈現在/過去〉の錯綜したかか…
ジョルジュ・ディディ=ユベルマン(1953- )の『時間のまえで』から「開かれ、アナクロニックな学問としての美術史」を再読。ディディ=ユベルマンの狙いは、これまでの歴史学の方法論的前提だった「影響」や「原型」による時間モデルを批判し、ヴァールブ…
カルロ・ギンズブルグ(1939- )の1986年に刊行された論文集。空間的にも時間的にもかけはなれた歴史的出来事を比較したいという誘惑(=「形態学的」方法)と、時間的・空間的連続性にもとづいた厳密な記述をおこなおうという意志(=「歴史学的」方法)と…
マーティン・ジェイ(1944- )によって書かれた、イメージ、暴力、戦争、歴史などのテーマ系が交差する論文・批評集。フロイトによって提起された「喪」と「メランコリー」の対比にもとづきつつ、「トラウマ」概念によってこうしたテーマ系を語るというのは…
ジャック・ランシエール(1940- )の『イメージの運命』から、第一章「イメージの運命」を読む。現代においてイメージがどのようなものと考えられているかをメタレヴェル的に分析していく手腕は、さすが鋭い。19世紀末に起こった「芸術の純粋化」と「芸術の…