- カール・シュミット『ハムレットもしくはヘカベ』(原著1956)
「世界劇場」の発想一つ見るだけでも、ルネサンスにおける芸術(虚構)と政治(現実)の関係が一筋縄ではいかないのは当然のこと。カール・シュミットによるシェイクスピア『ハムレット』論を繙いてみるに、ハムレットとジェイムズ1世、ガートルードとメアリ・スチュアートについて、反歴史主義と歴史主義をともに退けながら、その複雑な関係が剔抉されていて、『陸と海と』と同様に圧巻の一言。脱神話化がこれほど進展したかに見える西洋近代においてなぜハムレットという人物形象が一つの神話たりえたのか、いまなお神話でありつづけているのかという、いわば歴史のアナクロニズムの問いにすら踏み込んでいる。