デューリング
- Élie During, "La compression du monde" (2009)
プロトタイプ論のさらなる展開を追いかけるまえに、エリー・デューリングの別系列の現代芸術論も読んでみようと「世界の圧縮」を繙くと、こちらは時間論と密接に連動した話。
情報技術の進展によって現代社会の美学が未来派的な「高速性」からヴィリリオ的な「同時性」へと変貌しつつあるかに見えると指摘したうえで、アインシュタインの相対性理論とダン・グレアムやマーク・ルイスのインスタレーションを参照して、むしろ複数の時間性のあいだの断絶と干渉に視点をずらしていく。そうして単純で反動的な「ローカル」の称揚を回避していく手際は見事で、またなぜデューリングが「プロセス」や「パフォーマンス」や「関係性」に孕まれる瞬間性(現場体験)の偏重を疑問に付すのかがより明瞭になっているように思う。