The Passing

岡本源太(美学)。書物を通過する軌跡。http://passing.nobody.jp/

アラス

  • Daniel Arasse, Léonard de Vinci. Le rythme du monde. (1997)

ダニエル・アラスが「運動」という観点からレオナルド・ダ・ヴィンチを論じたこの書物、レオナルドの受容史にも目配せしているところはアラスならではだけれど、それとともにエミール・バンヴェニストの有名なリズム論をさらっと参照して、運動と形態の両側面をあわせもつものとしての「リズム」に着目している。運動といいリズムといい、西洋思想史のなかで「不動」よりも「運動」が、「存在」よりも「生成」が上位に置かれる(あるいは少なくともその理解が哲学の第一課題と見なされる)ようになった転換点は、やはりルネサンスあたりのように思えてくる。