The Passing +

岡本源太(美学)。書物を通過する軌跡。http://passing.nobody.jp/

マニグリエ

  • Patrice Maniglier, « Dessine-moi un éléphant ». (2010)

このところエリー・デューリングと並んで、現代思想と現代美術の双方にまたがる考察を精力的に展開しているパトリス・マニグリエ。芸術論『悪魔の遠近法』(2010)と映画論『フーコー、映画に行く』(2011)のあいだに発表されたこの小論を繙いてみると、問題意識もアプローチの仕方もデューリングによく似ている印象。さすが『マトリクス』について共著論文を書き、別々の論文でもしばしばたがいに参照しあっているだけのことはある、と言うべきか。
とはいえ、ある状況のローカルな知覚とグローバルな把握とのつながりを、あらかじめグローバルな構造が与えられていると想定しないで捉えよう、という問題意識には大いに共感できるものの(まさに「世界の複数性」だ)、芸術を「実験」と捉えるアプローチの仕方については、率直に言ってそれほど新しいものと思えなかったりする。否定しようというわけではないが、マニグリエもデューリングも取り上げる作品の傾向がわりとはっきりしているので、知らず知らずのうちに「実験っぽい」作品のみを選んで考察の範囲を狭めてしまう危険性を感じなくもない。そのとき、ローカルとグローバルとの連絡は「反復されるものの核」でもなく「反復されないものの特異性」でもないような同一性の様態にかかっているというその指摘から、さらにどれほど先にまで進んで行けるだろうか。