The Passing +

岡本源太(美学)。書物を通過する軌跡。http://passing.nobody.jp/

カントーロヴィチ

  • エルンスト・カントーロヴィチ『王の二つの身体』(原著1957)

西洋中世に、永遠と時間との中間としての「永久〔aevum〕」概念が登場することによって、「法人」概念の成立が促されたという、カントーロヴィチのよく知られた話。このとき援用される「質料は入れ替わっても形相が同じなら、そのものは同一」という考えは、あらためて読んでみると、「永遠/永久/時間」の区別を廃棄してしまうジョルダーノ・ブルーノの発想とちょうど逆という印象。

ブルーノの場合、同一性を保証するのは形相ではなくて質料で、「形相はたえず変わるけれども質料が同じなので、そのものは同一」となる。このとき、中世の政治神学では質料(具体的な個々人)の多様性が消し去られ、形相(王国)の同一性=永久性が確保されることになっていたのに対して、ブルーノの場合、質料は無限であるとしていわば思考の外に追放されるので、たえず変化する多種多様な形相のほうが前景化されることになっている。ここには、フランシスコ会聖霊派などに見られるような中世天使論の直線的時間と、ブルーノに見られるアヴェロエス的な円環的時間との対比も関連していそうではあったり。