岡本源太『ジョルダーノ・ブルーノの哲学――生の多様性へ』、月曜社、2012年
【目次】
はしがき
序章 ジョイス――憐れみの感覚
第一章 ディオ・デ・ラ・テッラ――人間と動物
第二章 セラピス――感情と時間
第三章 コヘレト――無知と力能
第四章 ペルセウス――善悪と共生
第五章 ヘレネ――芸術と創造
第六章 アクタイオン――生死と流転
終章 ブルーノ――生の多様性
附録 ジェイムズ・ジョイス「ブルーノ哲学」「ルネサンスの世界文学的影響」
あとがき
年譜/文献/索引
「世界の広がりと深みを放浪し、ありとあらゆる王国を探求せよ」(『英雄的狂気』より)。その先鋭的な宇宙観のゆえに異端宣告を受け、改悛を拒絶して生きながらにして火刑に処された16世紀イタリアの哲学者ジョルダーノ・ブルーノ(1548-1600)。トマス・アクィナスの厳密さとルネ・デカルトの明晰さのはざまに生まれ落ちた彼は、はたして近代科学の先駆か、それとも古代呪術の末裔か。ブルーノが開いた〈近代〉を生の多様性の発見として再評価し、たえず変化し続ける動的関係に充ち満ちた〈無限宇宙〉の哲学を読み解く。ジェイムズ・ジョイスの2篇のエッセイ「ブルーノ哲学」「ルネサンスの世界文学的影響」の新訳を附す。
【紹介・書評・イベント】
- 森元庸介氏による紹介、『REPRE――表象文化論学会ニューズレター』第15号、2012年5月
- 檜垣立哉氏との対談「ヴィータ・ノーヴァ――新しい生命哲学と人間の新生」、ジュンク堂書店難波店(大阪)、2012年5月27日
- (フ)氏による書評、『書標』2012年5月号
- 山口信夫氏による紹介と合評、第39回ルネサンス研究会、同志社大学(京都)、2012年12月8日
- 福島聡氏による短評、『みすず』2013年1・2月合併号「2012年読書アンケート」
- 星野太氏による書評「無限に可塑的なる生」、『表象』第7号、2013年3月、270〜275頁
- 山内朋樹氏による書評、『あいだ/生成』第3号、2013年3月、109〜113頁
- 「新プラトン主義協会賞」受賞、2013年9月21日
- F. C. 氏による書評(イタリア語)、Bruniana & Campanelliana, anno XIX, 2, 2013, pp.551-552.
【ERRATA】
目次(4頁)
誤】第三章 コヘレト――無知と力
正】第三章 コヘレト――無知と力能
90頁最終行
誤】なに一つ快適ものはなく、
正】なに一つ快適なものはなく、
107頁14行目
誤】たとえその支配関係が慣習によるものすぎず、
正】たとえその支配関係が慣習によるものにすぎず、
【せっかくなので一緒に読むと面白い書物10冊】
ジョルダーノ・ブルーノの訳書と研究書について基本的なことはすでにこちらにまとまっていますので、ここでは個人的なオススメ書物を。
ハンス・ブルーメンベルク『近代の正統性』(全三冊)、斎藤義彦、忽那敬三、村井則夫訳、法政大学出版局、1998-2002年
ブルーメンベルクの主著として名高い書物ですが、その最終章はブルーノ研究としても圧巻の一言。
エレーヌ・ヴェドリーヌ『ルネサンスの哲学』二宮敬、白井泰隆訳、白水社文庫クセジュ、1972年
ひとまずルネサンスの哲学にかぎって概観したいとあらば、類書は複数あるものの、個人的にはこれ。
エドガー・ウィント『ルネサンスの異教秘儀』田中英道ほか訳、晶文社、1986年
ジョルジョ・アガンベン『スタンツェ』岡田温司訳、ちくま学芸文庫、2008年概説はいいからもっと本格的にルネサンスの哲学を・・・というなら、この2冊から繙くのが良いかと。芸術にも興味があればなおのこと。
木村俊道『文明の作法』、ミネルヴァ書房、2010年
ツヴェタン・トドロフ『他者の記号学』及川馥ほか訳、法政大学出版局、1986年芸術よりもむしろ倫理や政治に関心のある向きは、たぶんこの辺が。
ジョン・トーランド『秘義なきキリスト教』三井礼子訳、法政大学出版局、2011年
シェリング『ブルーノ』茅野良男訳、『フィヒテ・シェリング』(世界の名著続9/中公バックス世界の名著43)所収、中央公論社/中央公論新社、1974年/1980年
田中純『アビ・ヴァールブルク』、青土社、2001年/2011年
宮田恭子『ジョイスと中世文化』、みすず書房、2009年ブルーノ哲学の残存に興味をもったら、いろいろありますが、たとえばこのあたり。
【もっと気軽に一緒に読める小説3篇】
ベルトルト・ブレヒト「異端者の外套」(『暦物語』)
ヴェネツィアの仕立屋夫婦、このまえ外套を卸したばかりのジョルダーノ・ブルーノが、まだ支払いを済ませてないのに異端審問所に捕まったと聞いて・・・。
ウォルター・ペイター『ガストン・ド・ラトゥール』
ロンサールに憬れ、モンテーニュの薫陶を受けた青年ガストンは、宗教戦争のためなおも混乱するパリでジョルダーノ・ブルーノの演説を聞く・・・。
要約不可能。でも随所にジョルダーノ・ブルーノとその思想への暗示が鏤められ、またそれを文体において実践してもいます。