2021-03-19 クロード・レヴィ=ストロース『悲しき熱帯』 読書 人類 哲学 歴史 社会 クロード・レヴィ=ストロース『悲しき熱帯』川田順三訳、中公クラシックス、2001年(原著1955年) 過去を、現在は失われてしまったものとしてではなく、現在に広がっているものとして捉えるとき、構造が見えてくる。風景や地層のように地理的な広がりへと分散するその交換と変形が、歴史の構造であり、構造としての歴史だ。とはいえ、それを見抜く眼は忘却によってこそ鍛えられるという。「古びた経験に私が差向かいになれるのに、二十年の忘却が必要であった」とは、構造主義が記憶術ならぬ忘却術であることの謂いなのか。デカルトの二十年、ヴァレリーの二十年にも比すべき、レヴィ=ストロースの二十年だ。