The Passing +

岡本源太(美学)。書物を通過する軌跡。http://passing.nobody.jp/

『現代の哲学的人間学』、ロータッカー

「哲学的人間学」(あるいは自然人類学や文化人類学と並べて「哲学人類学」と訳してもいいかもしれない)は、日本では1970年代あたりに一挙に翻訳されて研究書も書かれたものの、その後ほとんど途絶えてしまったように見える。記念碑的な『哲学の歴史』全12巻(中央公論新社)でも、まったく言及されていない。
とはいえ、このところ生態心理学のインパクトから「個体と環境の相互作用」や「人間と動物との境界」というユクスキュル的な主題が回帰してきているのを見るにつけ、ユクスキュルの発想を最大限に受け止めたヘルムート・プレスナーやアルノルト・ゲーレンらの哲学的人間学の成果は再吟味されてしかるべきようにも思う。マックス・シェーラーのように人間のみが「精神」に与るとするのでもなく、エルンスト・カッシーラーのように人間のみが「象徴」を有するとするのでもなしに、個体と環境の相互作用からいかに人間を理解できるだろうか。
おそらくは、このとき「イメージ」が問題になるからこそ、ベルトラン・プレヴォーやエマヌエーレ・コッチャが美学的観点からアドルフ・ポルトマン――哲学的人間学のもっとも近くにいた動物学者――の読み直しに着手しているのだろう。