The Passing

岡本源太(美学)。書物を通過する軌跡。http://passing.nobody.jp/

社会

 水島茂樹『“解放”の果てに―個人の変容と近代の行方』(ナカニシヤ出版、2003年)

とりわけジョン・メイナード・ケインズとマルセル・ゴーシェを主な導きの糸として、現代社会を「経済」と「他者」から解放されつつある社会として論じた書物。啓蒙が進めば進ほど人は成熟できなくなっていく。このパラドクスは啓蒙に内在的な論理の帰結であ…

 港千尋『影絵の戦い―9・11以降のイメージ空間』(岩波書店、2005年)

現代社会におけるイメージの問題を、実体とその影というメタファーから出発して考察した書物。過去の痕跡を読み、そのデータを蓄積するという行為が、未来を予測するという行為と不可分であることを論じている箇所があるが、そこで面白いのは、かつてはこれ…