The Passing

岡本源太(美学)。書物を通過する軌跡。http://passing.nobody.jp/

シャステル、ギンズブルグ

ルネサンスのグロテスク模様の装飾を、ミシェル・ド・モンテーニュが自分の『エセー』に重ね合わせたのは有名な話だけれど、これがルネサンスの自然論・芸術論・想像力論の交点を指し示している興味深い事例だということを、シャステルとギンズブルグを読みなおしてあらためて実感する。フィリップ・モレルはグロテスクの根底にある想像力の在り方をジョルダーノ・ブルーノの想像力論に見いだしたが、自然と人為、現実と空想の境界線を瓦解させるグロテスクの想像力は、はるか遠くまで反響して、アンドレ・ブルトンがジョルダーノ・ブルーノを引き合いに出して語った「わたしたちの想像力と思考が〈自然〉を越えるなどとは考えられない」という言葉にまでつながっているようにも思えてくる。