The Passing

岡本源太(美学)。書物を通過する軌跡。http://passing.nobody.jp/

シュミット、ヘラー=ローゼン

  • カール・シュミット「海賊行為の概念」(原著1937)
  • 同『陸と海と』(原著1942)
  • ダニエル・ヘラー=ローゼン「万人の敵」(原著2009)

陸(ビヒモス)と海(レヴィヤタン)という「エレメント」の鬩ぎ合いから世界史を読み解いた古典的著作として名高いカール・シュミットの『陸と海と』だけれど、世界の政治的動因が陸から海へと転換していく時代をとりわけ一六〜一七世紀に見ながら、その契機として「捕鯨」と「海賊」の重要性をとても強調しているのが印象的だったり。「海賊」は、ルネサンス以後にいわば世界を一つの「世界」へとネットワーク化していった存在でもあったよう。そこであらためて『現代思想』の「海賊」特集号(2011年7月)を引っ張りだして、シュミットの「海賊行為の概念」とダニエル・ヘラー=ローゼン「万人の敵」を読んでみたところ、こちらでは今日の「不法敵性戦闘員」「テロリスト」にまでいたる敵ですらない敵(人間ではない人間)の形象の系譜としての「海賊」が浮き彫りにされている。この「海賊」なるものの両義性は、少々突き詰めて考えてみたくなる主題のように思う。