The Passing

岡本源太(美学)。書物を通過する軌跡。http://passing.nobody.jp/

アルキエ、シェニウー=ジャンドロン

スタロバンスキーはけっこうざっくりとロマン主義の後継に位置づけていたシュルレアリスムの想像力論、実のところはもう少々複雑なわけで、スタロバンスキーの論考を参照しているシェニウー=ジャンドロンも、そしてアルキエの古典的研究も、むしろシュルレアリスムの二面作戦を指摘する。シュルレアリストたちによれば、想像されるものとしての〈超現実〉とは、ロマン主義(あるいはグノーシス主義やヘルメス主義)が考えるのような人知や自然を越えた世界のことではないし、また同時に、ある種の心理主義や科学実証主義が考えるような、たんなる人間の一精神状態のことでもない。このいずれも「想像/現実」「意識/行動」といった誤った区別にもとづいて、超現実をどちらか一方の領域のみに実体化してしまっているという。アルキエはこれを究極の「内在主義」として描き出して(批判して)いたりもするけれど、想像することがそれ自体で一つの現実的な行為であるという、理論それ自体を実践と見なす視点がこのシュルレアリスムの想像力論を支えているように思う。