The Passing

岡本源太(美学)。書物を通過する軌跡。http://passing.nobody.jp/

歴史

コッチャ

Emanuele Coccia, La vita sensibile. (2011) イメージ人類学とはまた別の流れで、エマヌエーレ・コッチャやダニエル・ヘラー=ローゼンやダヴィデ・スティミッリのように、一見して地味なくらい思想史に沈潜しながらイメージの問題系について大胆な哲学的展…

ポーコック

ジョン・ポーコック『徳・商業・歴史』(原著1985) ひきつづきポーコックの論文集。第二章に所収の「徳、権利、作法」を再読したら、こちらもようやく咀嚼できるようになってきているよう。政治に関して、「法」(神や自然も含め)をモデルにした思考に対し…

ポーコック、木村俊道

ジョン・ポーコック『マキァヴェリアン・モーメント』(原著1975) 木村俊道『文明の作法』(2010) 繙くたびに挫折するポーコックの書物。イタリアのヒューマニズムがイギリスの道徳哲学に引き継がれていった経緯についてようやく自分なりに関心にひっかけ…

ジルソン、ナルディ、川添信介

Étienne Gilson, Études de philosophie médiévale. (1921) Bruno Nardi, Saggi sull'aristotelismo padovano dal secolo XIV al XVI. (1958) 川添信介『水とワイン』(2005) いわゆる「二重真理説」の問題の広がりを確認しようとあれこれ繙いてみると、ジ…

コッチャ

Emanuele Coccia, "Physique du sensible. Penser l'image au Moyen Age" (2010) アヴェロエスのイメージ論で一書をものしているエマヌエーレ・コッチャならではと言うべきか、おもに鏡の経験を軸にしながら、西洋中世のイメージ論を縦横無尽に引用している…

齋藤晃

齋藤晃『魂の征服』(1993) トドロフとグリーンブラットを読んだときの記憶を掘り起こしつつ、ひきつづいてアメリカ大陸征服の経緯についてあれこれと。こうしたもつれあった思想の鬩ぎあいをたどっていると、過去の「残存」とか「救済」とかいう話は、「解…

トクヴィル(富永茂樹)

富永茂樹『トクヴィル』(2010) 名前しか知らなかったトクヴィル。「諸条件の平等」のパラドクスをめぐる思索のあとをたどってみると、ミシェル・フーコーやマルセル・ゴーシェなどの現代フランス政治哲学の背後にある厚みを痛感させられる。鎖の解体や部分…

グリーンブラット

スティーヴン・グリーンブラット『驚異と占有』(原著1988) 『マンデヴィルの旅』で語られている多様な風習や宗教への寛容さは、実は遠い他者に関するものであるかぎりで「寛容」というよりも「理論的好奇心」(ブルーメンベルク)であって、その証拠に近い…

クブラー

George Kubler, The Shape of Time. (1962) ジョージ・クブラーが展開するプライム・オブジェクトとレプリカの話、数学とか遺伝学とか文学理論とか比較文法とかのメタファーがあれこれ引っ張りだされるものの、率直なところやや中途半端な印象で、最終的には…

トドロフ、グリーンブラット

ツヴェタン・トドロフ『他者の記号学』(原著1982) スティーヴン・グリーンブラット『驚異と占有』(原著1988) グリーンブラットの文体はやはりトドロフに比して読むのに忍耐がいる。ともあれ、どちらの書物でも「翻訳」の問題がおおきく焦点化されていて…

トドロフ

ツヴェタン・トドロフ『他者の記号学』(原著1982) 「他者」の問題を考えるためにヨーロッパによるアメリカの「発見」を取りあげるというトドロフの手つきは、方法論的にはアガンベンの言う「パラダイム」に近しい印象があって、さらにはトドロフのストーリ…

グリーンブラット

スティーヴン・グリーンブラット『ルネサンスの自己成型』(原著1980) ブルクハルト的な「ルネサンスにおける人間の発見」のテーゼを発展的に継承するとこうなるのかといった感のグリーンブラットの「ルネサンスの自己成型」のテーゼ。「ルネサンスになると…

クブラー

George Kubler, The Shape of Time. (1962) あらためて読み直してみるとジョージ・クブラー、「様式論か図像学か」で二極化していた五〇〜六〇年代のアメリカの美術史業界情勢をまえにしてこの本を書いたのだろうなという印象が強かったり。これが七〇年代に…

ジョイス、エスポジト

James Joyce, "L'influenza letteraria universale del rinascimento." (1912) Roberto Esposito, Pensiero vivente. Origine e attualità della filosofia italiana. (2010) ジェイムズ・ジョイスがイタリア語で著した論考「ルネサンスの世界文学的影響」は…

 エラノスで

「エラノス叢書」(井筒俊彦監修、平凡社、1990-1995年) 〈エラノス会議〉に〈観念史クラブ〉――「エラノス叢書」と『観念史事典』(西洋思想大事典)。思想の歴史には関心を寄せる身ながらも、どうにも自分とは縁遠いものに感じられてしまう理由を、長らく…

バガヴァット・ギーター(赤松明彦)、マルクス・アウレリウス(荻野弘之)

赤松明彦『バガヴァット・ギーター』(2008) 荻野弘之『自省録』(2009) 思想史研究ではもはやひところのような「比較」という方法は使えないと感じるものの、インド=ヨーロッパ祖語の研究はじめ、『バガヴァット・ギーター』受容史の研究などでも、比較…

松枝到

松枝到『外のアジアへ、複数のアジアへ』(1988) 同『アジアとはなにか』(2005) 同『アジア文化のラビリンス』(2007) いまさら言う人も少なくなってきてはいるが、ともあれ「西洋と東洋」と言ったところでそれは地理的にはユーラシアの西側と東側の話に…

 『象徴図像研究』の

『象徴図像研究――動物と象徴』(和光大学総合文化研究所、松枝到編、言叢社、2006年) 『象徴図像研究』第1〜11号、和光大学象徴図像研究会、1987〜1997年 イメージの問題を考えるうえで、いまや「人類学」と「生態学」の視点の重要性を説き謳う声は喧しいも…

謝赫、福永光司、クルアーン(小杉泰)

謝赫『古画品録』(6世紀前後) 福永光司『中国の哲学・宗教・芸術』(1988) 小杉泰『クルアーン』(2009) モーセ、イエス、ムハンマド、それぞれがおこなったとされる「奇跡」の違いが面白い。モーセでは呪術師との対決が、イエスでは医師との対決が背景…

クルアーン(小杉泰)、張彦遠(宇佐美文理)

小杉泰『クルアーン』(2009) 宇佐美文理『歴代名画記』(2010) 絵画に描かれているとおりに画家はものを見ている、と考えてしまう粗雑な心理学者や現象学者は論外としても、ともすれば認識プロセスと制作プロセスは一直線に結びつけられてしまう。張彦遠…

風間喜代三、アガンベン

風間喜代三『ことばの生活誌』(1987) Giorgio Agamben, Signatura rerum. Sul metodo. (2008) 風間喜代三『ことばの生活誌』、どうしてこれまでこれを読んでいなかったのか。あの浩瀚なバンヴェニストに挑戦しては挫折していた身には、滅法面白い一冊。哲…

風間喜代三、アガンベン

風間喜代三『印欧語の故郷を探る』(1993) Giorgio Agamben, Signatura rerum. Sul metodo. (2008) インド=ヨーロッパ祖語にかぎらず、おおよそ「起源」を求めるときにまず第一に躓きとなるのは、いったい「共同体」なる概念をどのようなものとして理解す…

風間喜代三、アガンベン

風間喜代三『言語学の誕生』(1978) Giorgio Agamben, Signatura rerum. Sul metodo. (2008) 比較文法におけるアナロジーの用い方、その恣意性を回避するために実際の歴史的状況を参照するというやり方は、なんだかヴァールブルクのイコノグラフィーにどこ…

ノヴァーリス、風間喜代三

ノヴァーリス「断章と研究」(1799-1800) 風間喜代三『言語学の誕生』(1978) ノヴァーリスが最晩年の「断章と研究」に書き残したスピノザについての言葉を調べるべく、ひとまず邦訳であたりをつけようと手に取った二つの『ノヴァーリス全集』。牧神社版(…

ジョイス、ヌスバウム、アガンベン

ジェイムズ・ジョイス『ダブリン市民』(原著1914) マーサ・ヌスバウム『感情と法』(原著2004) Giorgio Agamben, Signatura rerum. Sul metodo. (2008) ジェイムズ・ジョイスの「死者たち」にちょこっと登場する「三美神」と「パリスの審判」、その解釈の…

アガンベン

ジョルジョ・アガンベン『王国と栄光』(原著2007) 再読しはじめてみると、「摂理」の話あたりに、ルネサンスのプラトン主義における一者と自然の理解にも資する論点がちらほら。 ただ、ルネサンス=近世を飛ばして中世と近代を「系譜」の名のもとに結びつ…

ジョイス、カントロヴィチ、ダグロン

James Joyce, "The Bruno Philosophy." (1903) エルンスト・カントロヴィチ『祖国のために死ぬこと』(1993) Tristan Dagron, Unité de l'être et dialectique. L'idée de philosophie naturelle chez Giordano Bruno. (1999) 久々再読のカントロヴィチ。ペ…

ヴィント、サラ=モランス、ダミッシュ

Edgar Wind, Pagan Mysteries in the Renaissance. (2nd ed. 1968) ルイ・サラ=モランス『ソドム』(原著1991) Hubert Damisch, Le Jugement de Pâris. (1992) 短いながらも、ユベール・ダミッシュ『パリスの審判』に「アナクロニズム」を論じた箇所がある…

オッソーラ、マスポリ・ジェネテッリ

Carlo Ossola, Autunno del Rinascimento. (1971) Silvia Maspoli Genetelli, Il filosofo e le grottesche. (2006) 久々に『ルネサンスの秋』をひっぱりだして、著者がコレージュ・ド・フランス教授のカルロ・オッソーラだったということに、いまさら気づく…

フィチーノ、グラナダ、坂本賢三

Marsilio Ficino, "De divino furore" (1457) Miguel Ángel Granada, "Amor, spiritus, melancolia" (1984) 坂本賢三『科学思想史』(1984) 「精気」を「身体」と「魂」との媒介として位置づける(ちょうど想像力を感性と知性〔悟性〕の媒介として位置づけ…